Sasa veitchii
Sasa veitchii (Carrie`re) Rehder var. veitchii
イネ科ササ属
隈笹、熊笹
日本
葉
多糖類や葉緑素、各種ビタミンやミネラル類、安息香酸、カルシウム、リグニン
『抱擁』『孤高』
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クマザサは多年生常緑笹で日本固有種。原産地は京都だが、日本の山間部に広く野生で生息している。草丈1~1.5m程になる。横幅4~5㎝、長さ20㎝程の葉を4~7枚つける。
クマザサはイネ科の単子葉類ササの一品種である。国内では、西日本に多く野生し、秋から冬にかけては葉の縁が白くなる(隈ができる)ことがクマザサの名の所以である。その葉は食品の腐敗防止のために古来より食品を包む材料、例えば笹寿司やチマキなどに用いられているが、その効果は葉に含まれる精油成分(安息香酸など)による殺菌、防腐作用に起因することが近年になって明らかにされた。クマザサ葉は民間薬としても、胃痛、糖尿病、高血圧、喘息などの改善に利用された。
クマザサは鮮やかな緑に白い隈取りの葉が美しく、好んで庭などに植えられることもある植物であるが、農業に利用されることもある。昔は田んぼにクマザサを入れており、それによって稲が倒伏せず、おいしい米ができたと言われている。また、枯死寸前の野菜にクエン酸とクマザサ微粉末の混合液を葉面散布することで、翌日には元気づいて瑞々しく甘い野菜に育つという。
● 防御免疫増強作用1)
クマザサ抽出物を用いた動物実験で防御免疫増強作用を示すことが確認された。抗原感作させたマウスにクマザサ抽出物1日1回42日間経口投与し、摂取抗原と反応する(抗原特異的)分泌IgA抗体産生への影響を検討した結果、クマザサ抽出物投与群は対照群に比べ防御免疫増強作用を示した(図1)。
● 抗アレルギー作用1)
クマザサ抽出物を用いた動物実験で抗アレルギー作用を示すことが確認された。抗原感作させたマウスにクマザサ抽出物1日1回42日間経口投与し、摂取抗原と反応する(抗原特異的)分泌IgE、IgG抗体産生への影響を検討した結果、クマザサ抽出物投与群は対照群に比べ抗アレルギー作用を示した(図2-3)。
図2 クマザサ抽出物の分泌IgE抗体産生への影響
図3 クマザサ抽出物の分泌IgG抗体産生への影響
● 免疫力活性化2)
クマザサ抽出物を用いた動物実験で免疫力活性化を示すことが確認された。アルカリ処理クマザサ抽出物を一回経口投与したマウスに、経時的にCarbon clearance 法(マウスの食細胞系の機能評価方法。個体の自然免疫力を評価する方法)を用いて貪食能(食細胞が異物、例えば病原菌などを取り込み処理すること。免疫システムの一部)を検討し、血中のCarbon濃度を測定した結果、投与3~5時間に貪食能の亢進が認められた(図4)。
図4 クマザサ抽出物の貪食能への影響
● 抗糖化作用3)
クマザサ抽出物を用いたin vitro試験で抗糖化作用を示すことが確認された。AGEsおよびその精製中間体である3-デオキシグルコソン(3DG)、ペントシジン(CML)の生成阻害率を測定した結果、クマザサ抽出物は抗糖化作用を示した(表1)。
サンプル | AGEs | 3DG | Pent | CML |
---|---|---|---|---|
クマザサ抽出物 | <0.001 | 0.002 | <0.001 | <0.001 |
アミノグアニジン | 0.008 | 0.003 | >0.1 | 0.071 |
● 発癌予防作用4)
クマザサ抽出物を用いた動物実験で発癌予防作用を示すことが確認された。クマザサ抽出物配合の餌を与えたマウスにマウス線維肉腫を移植し、経時的にその重量の測定、生存率を確認した結果、移植前および移植時からのクマザサ抽出物投与によって発癌予防作用を示した。
● ヒトサイトメガロウイルス増殖予防作用-15)
クマザサ抽出物を用いた細胞実験でヒトサイトメガロウイルス(HCMV)増殖予防作用を示すことが確認された。HEL細胞にHCMVを感染させ、サンプル添加後1日培養を行った後、ウイルス感染によって起こる細胞変性効果(細胞の形が丸く変形する現象)を確認した結果、クマザサ抽出物は濃度依存的にHCMVによる細胞変性効果を抑制した。
サイトメガロウイルス:幼少期に感染後、長期にわたって体内に潜伏しているが、AIDS患者等において重篤な日和見感染を起こす。
● ヒトサイトメガロウイルス増殖予防作用-26)
クマザサ抽出物を用いた細胞実験でヒトサイトメガロウイルス(HCMV)増殖予防作用を示すことが確認された。HEL細胞にHCMVを感染させ、培養上清中に放出されるウイルス数を測定した結果、HCMV感染前のクマザサ抽出物添加がウイルス数を効果的に抑制することを示した。
● 行動に対する影響7)
クマザサ抽出物を用いた動物実験で行動に対して影響することが確認された。4群に分けたマウスに3週間、水またはアルカリ処理クマザサ抽出物を含む飲料を自由または制限摂取させた結果、自由摂取群の行動量はクマザサ抽出物の摂取によって行動量に若干の上昇が認められ、摂取制限群をしたマウスにおいては、行動量は自由摂取群の2倍以上に上昇したが、その上昇はクマザサ抽出物の併用によって低下した。この結果からクマザサ抽出物が行動に対して影響することが示された。
1)酒井祐介,Food style21, 20(5): 21-24. (2016)
2)T. Oizumi, et al.,昭医会誌 , 48(5): 595-600. (1988)
3)M. Hori et al.,The science and engineering review of doshisha university, 52(3), 61-67 (2011)
4)Takahiro Seki, Hiroshi Maeda,Anticancer Research, 30:111-118, (2010)
5)R. Yamada. et al.,日本補完代替医療学会誌 , 7(1):17-25, (2009)
6)R. Yamada. et al.,日本補完代替医療学会誌 , 7(1):25-33, (2010)
7)H. Nagasawa ,明治大学農学部研究報告, 128: , 21-38, (2001)