Rosemary
Rosmarinus officinalis L.
シソ科
マンネンロウ、マンルソウ、迷迭香(めいてつこう)、Sea dew
地中海沿岸、西ヨーロッパ
葉、花
■ジテルペノイド
rosmanol
carnosol
carnosolic acid
epirosmanol
isorosmanol
図1 ローズマリーに含まれるジテルペノイド
■精油成分
cineole
borneol
camphor
limonene
pinene
図2 ローズマリーに含まれる精油成分
■その他
rosmarinic acid
ursolic acid
図3 ローズマリーに含まれるその他の成分
『変わらぬ愛』
11~5月
地中海地方原産の常縁低木。草丈は小さいもので60~120cm、大きいもので1.5~2m、横に広がらず上にのびていく。葉は硬質で細長く、長さ2.5~3cm程度になり、密生して生える。種蒔きの時期は4月、開花時期は春で、花の色は淡青色~暗青色。日向で水はけの良い中性~アルカリ性の土壌を好む。いろいろな品種が存在し、園芸用品種は耐寒性のものや花の色の違うもの、葉の形の異なるものなど多くある。
ローズマリーの属名は、薄い青色の小さな花が露に見えることからラテン語のRos(露)とMarinus(海)から名付けられた。地中海沿岸の乾燥した地域に自生し、園芸用、観賞用として人気が高く、世界中で栽培されている。耐寒性、半耐寒性の園芸種なども多く作られている。
薬用としての利用は、鎮痛、鎮静、消化促進、血液循環改善であり、特に関節痛、神経性に起因する不眠、頭痛、胃痛等の症状に良いとされる。西洋では、神経痛、リウマチ、機能性心臓疾患の外用剤(マンネンロウ精、rosmarin spiritus)として、ドイツでは複合マンネンロウ軟膏(Ungt. Rosmarini conpositum)として使用されている。急性衰弱症状や脳動脈硬化症改善に使用するマンネンロウ製剤も知られている。Kineippによると、彼の配合によるKineipp-Heilmittel werkで、製造されるローズマリーワインを昼・夕食後一杯飲むことでアトニー性胃炎症状による全身的な循環衰弱が改善される。中国では全草を迷迭香(めいてつこう)と呼び、鎮痛、発汗、健胃があるとされ、薬用として使われている。その他、入浴剤としても使用され、全身に疲れを癒す。
生あるいは乾燥した葉を、料理用ハーブとして臭みの強い肉やシチューの香り付けに、ウスターソースの香味料に、食品保存時の殺菌・酸化防止に用いている。乾燥しても香りが消えないので保存が利き、重宝なハーブである。またアロマテラピーオイルとしても人気である。花言葉は〈貞節〉 〈誠実〉〈変わらぬ愛と記憶〉である。
ローズマリーはその昔、白い花を咲かせていたと考えられ、聖母マリアがまだ子供のイエス・キリストを抱いてエジプトに逃れる途中、ローズマリーの茂みにキリストの衣を干したところ青くかわった、或いはマリアの清らかな心を表すようにその茂みが青くかわったといった伝説がある。又その草丈もキリストにちなんだ伝説があり、33年かかってキリストと同じ草丈になった後はそれ以上伸びないと言われている。特有の香りの芳しさはキリストの産着から生じたものであるという伝説もある。
お風呂に入れれば活き活きした肌を甦らせ、ワインで抽出した液を飲めばストレスが取れ、ローズマリーは体の内外から元気に美しくしてくれると言われる。このことにまつわる伝説も幾つか有り、その代表的な話にハンガリー王妃に関する物語がある。当時77歳だったエリザベス王妃は日々痛風の痛みに耐えながらひっそりと暮らしていた。そんな王妃の前に天使が現れローズマリーを使った香水の作り方を教えた。それをまとった瞬間王妃は若さを取り戻し、そのあまりの美しさに一目惚れしたポーランド王が求婚した、という話があり、その香水の作り方はウィーン王立図書館に保存されているとのこと1)。
花言葉にもあるように、誠実、貞節、記憶のシンボルとされ、それに基づくいわれが多くある。ヘンリー8世の王妃アンは結婚式で、ローズマリーの枝で作った冠をかぶり 「愛における貞節」を誓った。ヨーロッパでは花嫁から花婿に付き添いの女の子を通じてローズマリーの花束を贈り、貞節の誓いとした。学生は記憶力を高めるために試験を受けるとき身につけるとされている。
疫病が蔓延した17世紀のイギリスでは疫病除けの花として重宝され、家の床などにまいた。
● 脂質代謝促進作用
ローズマリー抽出物を与えた高脂食マウスにおいて、高脂食マウスに比べて有意に体重増加の抑制や脂質代謝の促進が見られた2)。
● 血糖低下作用
ローズマリー抽出物を高血糖マウスと正常マウスに投与した結果、高血糖マウスのみで著しい血糖値の低下がみられた3)。
● 腫瘍誘発阻害効果
0.5~2%程度ローズマリー乾燥全草を餌に混合しマウスやラットに与えると、発ガン物質(B[a]P,AOM,DMBA)による胃上部、肺、結腸、乳房の腫蕩形成が対照群に比較し、明らかに抑制された4)。
● 抗炎症作用
ローズマリー中のcarnosolやursolic acidにより、TPAあるいはアラキドン酸により誘発されるマウス内耳皮膚炎が抑制された。又、マウス表皮において、TPAにより誘発される皮膚肥厚化、表皮細胞層増加、内皮細胞層の浮腫形成、白血球の細胞外滲出等が阻害された5)。
● 抗けいれん作用
モルモットに対し、ローズマリーオイルを与えると同時に、モルヒネ投与した結果、抗けいれん効果が観察された6)。
● 細菌性毒素のショック抑制
動物に対し細菌性内毒素エンドトキシンを投与すると血圧低下、血小板減少等のショック症状が観察される。
ウサギに対しあらかじめエンドトキシンを投与し、その後rosmarinic acidを投与した結果、 明らかにエンドトキシンショックが抑制された6)。
● 抗菌活性
ローズマリー抽出物の食中毒菌に対する試験を行ったところ、グラム陽性菌に対して強い抗菌活性を示した7)。
● 抗酸化作用
ローズマリー抽出物において抗酸化活性を測定したところ、濃度依存的に活性が確認され、その活性は強い抗酸化を持つα-トコフェロールとほぼ同等のものであった。また、活性酸素によって皮膚の障害がおきるが、ローズマリー抽出物はコントロールと比較して有意に皮脂の過酸化ストレスに対する感受性が低かった8)。
● 美自作用
ローズマリー抽出物に含まれるcarnosolic acidは、強いメラニン生成抑制活性を示した。また、ヒト表皮細胞に対する美白効果も確認された。carnosolic acidはチロシナーゼに対する直接的な阻害活性はなく、メラニン生成関連酵素群の遺伝子発現及び転写を抑制することにより、メラニン生成抑制活性を示すことが報告された9)。
COMMISSION E: approved herbとして収載されている。
副作用は知られていない。
ただし大量のローズマリーオイルは腎臓と胃腸に良くないとされる。
1)ココロカンパニー 著.,「ハーブバイブル」, 丸善メイツ(1996)
2)Alvin Ibarra et al.,British Journal of Nutrition, 106, 1182-1189 (2011)
3)A.Erenmemisoglo et al.,Pharmazie, 52, 645 (1997)
4)Mou-Tuan Huang et al.,Food Factors for Cancer Prevention, 253, (1997)
5)Giachetti D. et al.,Planta Med , 389, (1988)
6)Bult H.et al.,Br J Pharmacol., 84, 317(1985)
7)Fernanda VB Petrolini et al.,Brazilian Journal of Microbiology., 44 , 3, 829-834(2013)
8)Calabrese V. et al.,Int J Tissue React,22(1), 5 (2000)
9)小坂邦男ら,Fragr J, ,28(9), 59 (2000)