オオバコ

英名

Plantain

学名

Plantago asiatica L., P. lanceolata L.

科目

オオバコ科

別名

大葉子(おおばこ)、車前草 (P. asiatica)、ヘラオオバコ (P. lanceolata)

原産地

東アジア・アメリカ・ヨーロッパ

利用部位

花期の全草・種子

成分

オオバコに含まれる成分は種によって異なり(表1)、作用にも差がある。

 
表1 オオバコ(P. asiatica) とヘラオオバコ(P. lanceolata)との主成分比較1),2)
成分\基原植物オオバコヘラオオバコ
フェニルエタノイド配糖体plantamajosideacteoside
フラボノイドplantaginin含有せず
イリドイド配糖体aucubinaucubin, catalpol
 

図1 オオバコ(P. asiatica) とヘラオオバコ(P. lanceolata)の主成分

花言葉

『足跡』『白人の足跡』『足跡を残す』

見ごろ

4~9月

 オオバコ科に含まれる植物は広く世界に分布し 、約300近い種が知られている 。日本でも 亜寒帯の北海道から、亜熱帯の沖縄まで広く分布し 、雑草としてよく知られている。多年草。日本ではオオバコP. asiaticaが医薬として、また民間での需要も多い 。
 国によって使用するオオバコの種は異なっている。中国ではオオバコ(P. asiatica)の他にムジナオオバコ(P. depresa)も使われ、ヨーロッパでは ヘラオオバコ(P. lanceolata)が主として使われている。フランスではセイヨウオオバコ(P. major)や P. mediaも使われている。パラグアイでは P. tomentosaの全草が市場に出回っている 。このようにオオバコは世界的に極めて広く分布し 、身近な雑草ではあるがその薬効は古くから人々に知られ繁用されている。

~どこでもある身近なハーブ~

 

 オオバコは野原、空地、路傍、登山道など人が多く歩く場所に広く生育している。オオバコ属の学名Planta(足の裏)とago(運ぶ)を組み合わせた由来のとおり、古くは牛馬のひく車の通る道ばたに多く生えていたため、車前草の名が生まれた。また、生長点が地下にあるため、踏みつけられでもダメージを受けにくく、広く分布することができた。日本名オオパコはその大きな葉から大葉子(おおばこ)と呼ぶようになった。
 オオバコ (P. asiatica)と並んで、日本全国に広く分布するヘラオオバコ (P. lanceolata)はヨーロッパ原産で、江戸時代末期に渡来したものといわれている。

以下の項目は、その植物の期待される効果を示すものです。

生理活性機能

● 抗菌・抗ウィルス作用
 オオバコの主成分plantamajosideとヘラオオバコの主成分acteoside は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対して抗菌活性を認めた1) 2)。オオバコ並びにセイヨウオオバコの熱水抽出物に、ヘルベスウィルス、アデノウィルスに対しての抗ウィルス作用が認められた3)

 

● 抗アレルギ一作用1),2)
 plantamajosideはアラキドン酸より誘発されるマウスの耳急性炎症モデルを用いる抗アレルギー試験の結果、高い抗炎症作用を示した。また、オオバコの主成分plantaginin はアナフィラキシー反応に対して、防御作用を示した。

 

● 抗炎症作用4)
 オオバコの水抽出物はラットのカラゲニン浮腫に対して抗炎症作用のあることが報告されている。この作用は主成分aucubinによるものだと考えられている。

 

● 鎮痛作用4)~6)
 ヘラオオバコの成分acteosideは酢酸ライジングテストにおいて鎮痛作用を示した。

 

● 抗酸化作用1),2),7)
 DPPH(α,α-diphenyl-β-picrylhydrazyl free radical)に対するラジカル捕捉作用を検討した。Plantamajosideとacteosideはいずれも同程度の活性を示した。またラット肝ミトコンドリアにおけるADP-鉄によって誘導される過酸化脂質生成反応ではacteosideの方が plantamajosideより強い抑制作用を示した。
 オオバコ葉のエタノール抽出物を飲用した肥満高脂血症被験者において、食後の血中の酸化型低比重リポタンパク質量が有意に低下し、またリンパ球におけるDNAの損傷が抑制された。

図2 オオバコ葉のエタノール抽出物を飲用した肥満高脂血症被験者における高脂食後の血中の酸化型低比重リポタンパク質量の変化

● 抗腫瘍活性3)
 オオバコ並びにセイヨウオオバコの熱水抽出物が白血病細胞、リンパ腫、癌(膀胱、骨、頚部、腎臓、肺、胃)の各培養細胞において増殖を抑制した。

 

● 鎮痙薬活性8)
 ヘラオオバコのエタノール抽出物が、モルモットにおいて、アセチルコリンやヒスタミンなどのアゴニストによって誘導される回腸収縮や気管収縮を抑制した。

 

● 脂質代謝改善作用7),9)
 エタノール抽出したオオバコ種子の多糖を経口摂取したマウスにおいて、脂質の吸収が低下し、血中および肝臓コレステロール値が低下した。
 また、オオバコ葉のエタノール抽出物を飲用した肥満高脂血症被験者において、食後の血中の遊離脂肪酸量が低下する傾向が見られた。

図3 オオバコ葉のエタノール抽出物を飲用した肥満高脂血症被験者における食後の血中の遊離脂肪酸量の変化

安全性

COMMISSION E:approved herbとして収載されている(ヘラオオバコ)。
流通品規格
 車前草…日本薬局方に収載
 車前子…日本薬局方に収載
推奨量
 車前草 : 1日最大分量10g。咳にはこれを水約600mlで煎じ、食前又は食間に3分服する。
 車前子 : 1日最大分量5g。

引用文献・ 参考文献

1)西部三省,現代東洋医学, 14, 1, 125 (1993)

2)S. Nishibe,Foods & Food Ingredients J. of Japan166, 43 (1995)

3)L.C. Chiang et al.,Am J Chin Med.31 (2):, 225 (2003)

4)M.C. Recio et al.,Planta Medica60, 232 (1994)

5)中村ら,日本生薬学会第39回年会講演要旨集 , 126 (1992)

6)中村ら,日本生薬学会第38回年会講演要旨集 , 178 (1991)

7)Y. Lim et al.,Nutrition Res, (2013)

8)H. Fleer and E.J. Verspohl,Phytomed,(2007)

9)J.L. Hu et al.,J Agric Food Chem, (2014)