Maritime Pine
Pinus pinaster Aiton
マツ科
フランス海岸松
ヨーロッパ
樹皮
■カテキン類
(+) -catechin
(-) -epicatechin
■プロアントシアニジン
■フェノールカルボン酸
coumaric acid
caffeic acid
ferulic acid
gallic acid
vanillic acid
図1 松樹皮含有成分
『不老長寿』『哀れみ』『同情』
4~5月
日当たりのよい場所を好んで育つ。
フランス海岸松は、ヨーロッパ南西部~南イタリア東部にかけて分布する常緑高木である。樹高40 m、樹皮は赤褐色で深い縦溝がある。枝は赤褐色で無毛。短枝の葉は2個、長さ10~25 cmで果は針状。球長さ8~22 cm、円錐状卵形体。種子は7~8 mmで翼は3 cmに達する。
松樹皮の効果として有名な伝記がある。16世紀、フランスの探検家であるジャック カルティエ氏がカナダを探検中に、隊員が次々と壊血病になって倒れていった。カナダの先住民が松の針状葉と樹皮のお茶を飲ませると隊員達はめざましく快方へと向かっていった。この話は400年以上たってフランスボルドー大学のマスケリエ教授によって明らかにされる。マスケリエ教授はピーナツの薄皮から色素成分を抽出し、これをOPC(Oligomeric procyanidin)と名付けた。またこのOPCが南フランスの松樹皮に多く含まれていることを発見した。OPCは強力な天然の抗酸化物質であり、ビタミンCやEの生理活性を増強させる。壊血病を治癒したのは、針状葉に含まれる少量のビタミンCの作用を、樹皮に含まれるOPCが増強したためといわれている。
松樹皮の抽出物は、米国健康食品市場でもここ数年安定した実績を残している。日本でも最近になって、市場が活発な動きを示し始めている。
多くはポリフェノール含量の規定が設けられている。
● 抗酸化作用・活性酸素消去作用1~6)
フリーラジカルの不活性化、ビタミンCラジカルをビタミンCに還元する作用、ビタミンEの酸化防止作用が確認されている。また脳に沈着するタンパク質でβ-アミロイドに起因する酸化損傷を予防するといった報告もある。
● 末梢血管拡張作用7)
● 末梢血管抵抗減弱作用8)
自然発症高血圧ラット(SHR)に松樹皮抽出物を10-100 mg/kg経口投与した結果、遺伝子誘発毛細血管脆弱性が濃度依存的に改善された。効果は経口投与8時間後まで持続した。
● 抗炎症作用9)
● コラーゲン、エラスチン分解防止作用 10,11,12)
松樹皮抽出物はコラーゲンやエラスチンと結合し、これらのタンパク質の分解を防ぐ。松樹皮抽出物とコラーゲンとの結合作用は、コラーゲンの構成成分であるアミノ酸のプロリンへの高い親和性による。
● コレステロール低下作用13)
ラットに普通飼料(CTD)、高コレステロール飼料(HCD)、松樹皮抽出物添加高コレステロール飼料(PBE 0.02%, 0.2%, 2%)を与え、血中及び肝臓中の総コレステロール(TC)を測定した。その結果、28日後にPBE 0.2%群および2%群の血漿中TCは、HCD群およびPBE 0.02%群と比較して有意に低下した((P < 0.05, 図2)。肝臓中においても、28日後にHCD群と比較してPBE 0.02%群, 0.2%群および2%群ともにTCの有意な低下が認められた(図3)。以上より、松樹皮抽出物は高コレステロール飼料の摂取時において血中及び肝臓中のコレステロール低下作用を持つことが明らかとなった。
図2 ラットの血漿総コレステロール変化
図3 ラットの肝臓中総コレステロール変化
○ 血小板凝集抑制作用14)
男性の喫煙者22人に対し、アスピリンと松樹皮抽出物を比較したところ、アスピリンより低用量で同等の血小板凝集抑制効果が認められ、またアスピリンのように出血時間が長くなるというような作用は認められなかった。
○ 注意欠陥多動性障害(ADHD)改善15)
ADHDとは、注意力、多動性、衝動性を自分でコントロールできない脳神経学的な疾患である。松樹皮抽出物はADHDに対して治療効果が認められている。
○ 原発性月経困難症、子宮内膜症の改善16)
月経困難症患者及び子宮内膜症患者に、松樹皮抽出物30 mg/dayを月経終了日より連日、月経第3周期終了まで摂取させ、月経痛の変化を観察した。松樹皮抽出物投与後月経第1周期目において、月経困難症患者で20例中15例、子宮内膜症患者で20例中14例において月経痛の改善ないし消失を認めた。
副作用はほとんどないが、まれに胃腸障害、めまい、吐き気、頭痛などを引き起こすことがある1)。
1)Rohdewald P.,International Journal of Clinical Pharmacology and Therapeutics., 40(4), 158(2002)
2)Packer L.et al.,Free Radical Biology and Medicine., 27(5-6), 704(1999)
3)Macrides T. A.et al.,Biochemistry and Molecular Biology International., 42(6), 1249(1997)
4)Virgili F.et al.,FEBS letters., 431(3), 315(1998)
5)Cossin E.et al.,Biochemistry and Molecular Biology International., 45(3), 583(1998)
6)Liu F.et al.,Biological and Pharmaceutical Bulletin., 23(6), 735(2000)
7)Fitzpatrick D. F.et al.,Journal of Cardiovascular Pharmacology., 32(4), 509(1998)
8)Gabor M.et al.,Phlebologie., 22, 178(1993)
9)Blazso G.et al.,Die Pharmazie., 52(5), 380(1997)
10)Tixier J. M.et al.,Biochemical Pharmacology., 33(24), 3933(1984)
11)Hagerman A. E. and Butler L. G.,Journal of Biological Chemistry., 256(9), 4494(1981)
12)Grimm T.et al.,Free Radical Biology and Medicine., 36(6), 811(2004)
13)池口主弥,日本栄養・食糧学会誌, 59(2), 89(2006)
14)U. S. Patent., #5, 720, 956, Feb.24, 1998
15)U. S. Patent., #5, 719, 178, Feb.17, 1998
16)小濱隆文,日本末病システム学会雑誌, 8(1), 50(2002)