パセリ

英名

Parsley

学名

Petroselium crispum (Mill.) Nyman ex A.W.Hill.、P. sativum Hoffm.、P. Hortense Hoffm.

科目

セリ科

別名

オランダセリ(和蘭芹)

原産地

地中海地域

利用部位

葉、根、種子

成分

■精油成分
 apiole
 myristicin
 tetramethoxyallylbenzene
 p-mentha-1,3,8-triene
 1-methyl-4-isopropenylbenzene
 α-, β-pinene
 β-myrcene
 β-ocimene
 β-phellandrene
 p-terpinene
 α-terpineol
 α-copaene
 carotol
 caryophyllene

■フラボノイド
 apiin(apigenin-7-apiosyl-glucoside)
 luteolin-7-apiosyl-glucoside
 apigetrin(apigenin-7-glucoside)
 luteolin-7-diglucoside
 kaempferol-3-glucoside

■フロクマリン
 bergapten
 oxypeucedanin
 8-methoxypsoralen
 imperatorin
 isoimperatorin
 isopimpinellin
 psoralen
 xanthotoxin

図1 パセリ含有成分

花言葉

『死の前兆』『不和』『勝利』『祝祭』『お祭り気分』『愉快な気持ち』

見ごろ

6~7月

 パセリはセリ科に属する2年草または多年草植物で、高さ30~60 cmの茎を持ち、多くの分枝を出し、2.5~5 cm切れ込の著しい濃緑色の三出複葉をつける。花は小さく黄色~黄緑色で複散形花序、果実は卵形、長さ3 mmくらいで特有の芳香をもつ。

~栄養豊富な名脇役~

 

 パセリは、ギリシャ神話では英雄アルケモラスの血から生えた草とされ、死のシンボルとされている。古代ギリシャでは死と悲哀の象徴とし、葬礼や花輪や墓の飾りに用いられる。一方、剣闘などの競技勝者に花冠として使用された。古代エジプト、ギリシャ、ローマ時代から栽培され香味料やサラダとして食されてきた。また、ワインの酔いを防ぐため、花輪にのうに首にかけたり、束にして宴会のテーブルに飾ったりして用いられたとも伝えられている。中世に入りパセリは薬草、香草として中部ヨーロッパから北ヨーロッパにまで広がり、16世紀にイギリスへ、17世紀にアメリカへ入り多くの改良品種が創られ、栽培されている。日本には、オランダより17世紀に伝わったとされ、江戸時代中期に出版された「大和本草」にオランダセリとして紹介されている。明治時代以降、西洋野菜として広く栽培されるようになった。
 現在の日本では、縮れた葉が特徴となっているパラマウント種(モスカールドパセリ)が主に栽培されている。セロリの葉に似た平たい葉の品種であるイタリアンパセリ(フレンチパセリ)も有名である。他に根がごぼうのように太く根も葉も食用とするハンブルグパセリや葉柄の部分が大きいナポリタンパセリなどがある。
 パセリは、サラダや各種肉料理の飾りつけ、ブーケガルニ(フランス料理に使う香草の束)など、広く料理に用いられている。薬草としては、強い利尿作用が知られており、泌尿器の感染症や結石の治療や痛風にも良いとされている。また、通経作用が伝承されており女性薬としても用いられてきた。さらに、リウマチ、貧血、皮膚の老化防止、捻挫の腫れの痛みの緩和にも効果があると言われている。パセリには、マラリア特効薬であるキニーネの代用とされるアピオール、骨粗鬆症予防に期待される女性ホルモン様作用を示すアピゲニン配糖体(アピイン)などが含まれている。
 料理の引き立て役としての利用が多いパセリであるが、ビタミン、ミネラルなどの豊富な栄養素を含み、さらに薬効を持つ健康ハーブの1つである。

以下の項目は、その植物の期待される効果を示すものです。

作用

  • ●利尿作用
  • ●抗菌作用
  • ●血糖降下作用
  • ●消化促進
  • ●抗酸化作用
  • ●エストロゲン作用
  • ●口臭防止

生理活性機能

● 利尿作用1)
 パセリは民間療法では利尿薬として使用されてきた。ラットにおいてパセリ種子水抽出物は水を投与した群と比較すると、排尿量と尿排泄速度が増加した。

 

● 緩下作用
 パセリ種子水抽出物は緩下作用もあることが報告されている2)。利尿および緩下効果は、パセリ種子水抽出物が体の電解質濃度を調節するNa+-K+ポンプの阻害によりナトリウムと水の再吸収を抑制することで起こるとされている。

 

● 女性ホルモン様作用
 パセリには女性ホルモン様の作用を示す成分が含まれており、apigenin、kaempferolに強い活性が示されている。卵巣摘出マウスに経口投与した場合、子宮重量増加がみられた3,4)

 

● 胃潰瘍改善効果5)
 パセリ葉抽出物を投与することにより胃粘膜損傷の改善を示し、また、胃液の分泌を抑制した。

 

● 血糖効果作用6)
 糖尿病ラットにおいて、パセリ葉水抽出物を投与することにより血糖値が減少した。パセリの血糖値効果作用はインスリン様作用ではなく、直接的にグルコースを産生する糖新生の阻害、糖を消費する方向へ刺激するのではないかと考えられている。

 

● 抗ガン作用
 パセリ葉の精油成分は、抗発ガン作用の指標とされるグルタチオンS-トランスフェラーゼの酵素活性をマウス肝臓、小腸粘膜において向上させ、myristicinに特に強い活性が見られた7)。また、パセリ抽出物はオカダ酸(発ガンプロモーターの一つ)の酵素阻害に対し抑制作用を示した8)。さらに、パセリ抽出物は正常細胞に影響を与えず、ガン細胞の増殖を抑制することが報告されている9)
 ホルモン充填療法の成分であるプロゲスチンは、閉経後の女性における乳がんのリスクの増加に関与している。一般的に投与されるプロゲスチンであるメドロキシプロゲステロン酢酸エステル(MPA)は、腫瘍細胞において血管内皮増殖因子(VEGF)の生産を増加させ、結果、血管形成や癌細胞の増殖を誘導する。パセリなどに含まれるフラボノイドであるアピゲニンは、In vitroでのヒト乳がん細胞においてプロゲスチン依存性VEGFの合成を阻害した。さらに、7,12-ジメチルベンズ(a)アントラセン(DMBA)処理によりSprague-Dawleyラットで誘導されたプロゲスチン依存性乳がんモデルにおいて乳がんの発症を遅らせ、発生率を低下させた。このことから、アピゲニンがプロゲスチンにより発症する乳がんの重要な化学予防特性を有していることが示唆された13)

 

● 抗菌作用10)
 パセリ抽出物、フロクマリン類は、病原性大腸菌やリステリア菌、野菜類の軟腐病菌に対して生育阻害活性を示した。

 

● 免疫調節作用14)
 パセリ精油は、細胞毒性を示すことなく、マクロファージの活性を調節することができる。このことから、自己免疫疾患およびアレルギー性免疫疾患を治療するための有用な天然物となる可能性がある。

臨床試験

〇 抗酸化作用11)
 健常者14人を対象に、パセリ摂取群と未摂取群に分け試験が行われた。apigeninの排泄、血中の抗酸化酵素群を測定し評価した。apigeninが体内へ吸収されていることが確認され、パセリ摂取後1週間において、抗酸化酵素であるグルタチオンレダクターゼ、スーパーオキシドディスムターゼの活性は増加した。

 

〇 抗変異原性作用
 非喫煙男性3人を対象に、尿の変異原性試験を行った結果、パセリを摂取することにより3人とも尿の変異原性が減少し、86~96 %の抑制率を示した12)

安全性

COMMISSION E:approved herbとして収載されている。
妊娠中の服用を避ける。
まれに皮膚、粘膜におけるアレルギー反応を引き起こす。

引用文献・ 参考文献

1)Kreydiyyeh S.I. et al.,J.Ethnopharmacol79,353(2002)

2)Kreydiyyeh S.I. et al.,Phytomedicine8,382 (2001)

3)Yoshikawa M., et al.,Chem.Pharm. Bull.48, 1039 (2000)

4)吉川雅之.,食品と科学42,45(2000)

5)Al-Howiriny T., et al.,Am. J. Chin. Med , 31, 699(2003)

6)Yanardag R.,et al.Biol. Pharm. Bull.., 26, 1206(2003)

7)Zheng Guo-Q. et al.,J. Agric. Food Chem.40 , 107(1992)

8)萩野浩幸ら.,日本栄養・食糧学会誌,50, 51 (1997)

9)金美貞ら,医学と薬学 ,48, 859 (2002)

10)Manderfeld M. M., et al.,J. Food Prot.,60, 71 (1997)

11)Nielsen S.E., et al.,Br. J. Nutr.,81, 447 (1999)

12)Ohyama S., et al.,Mutat. Res., ,192, 7 (1987)

13)Benford M. et al.,Cancer Prev Res (Phila).,4, 1316-24 (2011)

14)Yousofi A. et al.,Immunopharmacol Immunotoxicol.,34, 303-8 (2012)