Mulberry
Morus alba L.、M. bombycis Koidz.
クワ科
マクワ、トウグワ、カラヤマグワ、White mulberry、桑、白桑、ヤマグワ、桑椹
Morus alba L.:中国、朝鮮半島、M. bombycis Koidz.:日本、中国、朝鮮半島
葉、根皮、枝、果実
葉
●1-deoxynojirimycin1)
●フラボノイド
rutin
quercetin
isoquercetin
●ステロール
ergosterol
campesterol
β-sitosterol
●多糖
pectin
●タンニン
根皮
●トリテルペノイド
α-, β-amyrin
●フラボノイド
morusin
kuwanone類
実
●アントシアニン
cyanidin-3-glucoside
cyanidin-3-rutinoside
●ナイアシン(niacin)
『彼女の全てが好き、ともに死のう』『私はあなたを助けません、あなたより生き延びる』
4~5月(開花)、6月(収穫)
低木~高木(樹高3~7 m、あるいはそれ以上)の落葉樹。葉は縁に鋸歯を有する卵型あるいは心臓型で、長さ5~20 cm、幅5~11 cm程度、互生して生える。花は黄緑色、単性で雌雄異株の風媒花、4~5月に開花する。実は多肉質で深紫~黒色(稀に白色)、結実は6~7月頃で、食用可。
クワはイラクサ目クワ科クワ属に分類され、数種が確認されており、中国(江南、安徽、湖南、浙江、江蘇、広東、四川、山東省などに主産)、朝鮮半島、日本(長野、静岡、香川、徳島など)に分布し、山の中や畑などで目にすることのできる植物である。
「桑」という漢字は象形文字とされ、徐鍇の『説文解字』に「叒の音である若(じゃく)は東方の自然に育つ神木の名で、桑なるものは蚕が葉を食うところの神木である。ゆえに木を叒の下に加えて別った」とあるように、神を象徴した大切な木であったことが覗える。
日本では、絹糸生産のための養蚕植物として栽培されてきたが、中国では古から薬用植物として利用されてきた。漢方では、桑白皮(根皮)、桑枝(若枝)、桑葉(葉)、桑椹(果実)が日常的に用いられている。
葉の部分は、中国の『神農本草経』の中品として「桑葉(ソウヨウ)」の名で記載され、日陰干ししたクワ葉を煎じた「神仙茶」を風邪の咳を治すのに使用するという記述がある。また、蘇頌が「桑葉は常服される。4月や10月に採取した葉を陰干し、粉末にし散・丸の任意の物にして服す。あるいは水に煎じて茶に代えて飲む。又、霜後の葉を湯に煮て手足を淋渫すれば風痺去るによい」と述べていたといわれる。栄西(1141-1215)の書いた「喫茶養生記」の中にも”服桑葉法”の節において「陰乾しにした桑の葉を粉にしてお茶と同じようにして飲む。久しく服すると、腹中に病はなく、心身は軽利なり。是れ仙術なり」とあり、夜食べ過ぎたときや酒を飲む人によいとされる。
葉に関して1-deoxynojirimycin含量を規定しているものがある。
葉
根皮
果実
● 糖尿病発症抑制
Ⅰ型糖尿病モデルマウスに、クワ葉粉末5%を含む飼料を19週間与えたところ、糖尿病発症が有意に遅延した2)。
自然発症糖尿病ラットにクワ葉2.5~5%添加食を与え続けたところ、46週齢を過ぎたところ、対照群と比較し有意に糖尿病発症が抑えられた3)。
● 内臓脂肪減少4)
クワ葉摂取により、ショ糖投与で増加したウィスターラット内臓脂肪が、対照レベルまで低下する事、卵巣摘出ラット(更年期女性モデル)において30%クワ葉含有食を摂取することで内臓脂肪が有意に減少することが観察された。
● 血小板凝集抑制5)
クワ葉抽出物を正常ウサギ及び高コレステロール負荷ウサギの静脈内に投与すると、いずれのウサギも血小板凝集能が抑制され、プラスミン活性の増強が見られた。これはクワ葉抽出物の血液流動性改善の可能性を示唆する。
● 脂質代謝の改善6)
クワ葉抽出物をコレステロール負荷により実験的に高脂血症としたウサギに投与した結果、脂質代謝の改善効果が観察された。
● 美白作用7)
クワ葉抽出物から20種類のフラボノイド化合物が単離され、そのうち18種類のフラボノイド化合物をB6F10メラノーマ細胞により、チロシナーゼ活性およびメラニンの産生が有意に減少することが認められ、特にkaempferol及び7,2′,4′-trihydroxyflavanoneは作用が強く、クワ葉抽出物は皮膚の色素沈着過度に改善の可能性が示された。
○ 食後高血糖抑制8)
Ⅱ型糖尿病患者に、クワ葉抽出物を食前投与し食後の血漿血糖値とHb1AC、血清インスリン濃度の測定を行った。この結果、血漿血糖値とHb1ACの上昇が抑制されており、作用機序として糖吸収抑制が考えられた。低血糖などの副作用は見られなかった。
~人にも蚕にも クワの葉~
蚕はおいしそうにクワの葉をたくさん食べますが、様々な書物にある多くの記載から人のからだにも良い事がうかがえます。
【神農本草経】寒熱、出汗を防ぐ
【唐本草】濃い煎汁は、脚気・水腫・大小腸に良い
【孟詵】止渇には炒り煎じて飲す
【本草拾遺】冬干の葉を濃く煎じてコレラによる腹痛・嘔吐・下痢に
【日華氏諸家本草】五臓を利す、間接を通す。通風、出汗、撲損には蒸して覆う
【図経本草】煮汁を手足にかけると風痺を去る
【丹渓心法】焙り乾燥させ粉末にして空腹時に重湯で調えて服用すると、盗汗を止める
【本草蒙筌】煮汁で目を洗うと風泪を去る、水腫・脚浮を消す、気を下す、間接を利す
【本草綱目】労熱による咳嗽を治す、目を明らかにする、髪を長てる
【本草叢新】燥を滋う、血を涼める、止血する
【百草鏡】腸風を治す
【本草求真】肺を清める、胃を瀉ぎ出す、血を涼める、湿を燥す
【本草求原】吐血、金蒼出血を止める
【山東中薬】喉痛、歯肉腫痛、顔の浮腫を治す
牧野和漢薬草大図鑑、北隆館
中薬大辞典、小学館
1)八木政広ら,農化, 50 (11), 571 (1976)
2)小島芳弘,日本栄養・食糧学会誌, , 54, 6, 361 (2001)
3)宮原智江子,機能性食品に関する共同事業報告(神奈川県), 2, 52 (1996)
4)青山みどり,群馬県立医療短期大学紀要, 8, 59 (2001)
5)小島尚,機能性食品に関する共同事業報告(神奈川県), 2, 60 (1996)
6)土井佳代,機能性食品に関する共同事業報告(神奈川県), 1, 51 (1992)
7)Jeong J. et al.,Molecules., 20 ,8730-8741 (2015)
8)斉藤嘉美,臨床医薬,18, 1389 (2002)