マカ

英名

Maca

学名

Lepidium meyenii Walp

科目

アブラナ科

別名

Peruvian ginseng、MAKA、アンデス人参

原産地

ペルー

利用部位

塊茎

成分

● グルコシノレート類

benzylglucosinolate
glucotropaeolin
glucoalyssin
glucosinalbin
glucobrassicannapin
glucobrassicin
4-methoxybenzyl glucosinolate
4-methoxyindolyl-3-methyl glucosinolate
● イソチオシアネート類
benzylisothiocyanate
4-methoxybenzylisothiocyanate
● カテキン類
● アルカロイド類
macaridine
lepidilin A
lepidilin B
lepidine

● 脂肪酸
linoleic acid
palmitic acid
oleic acid
● アミノ酸類
lysine
arginine
● ミネラル類
● ビタミン類
● 糖類
fructose
sucrose

● ステロイド
blassicasterol
ergosterol
campesterol
ergostadienol
sitosterol
● その他
macamides
macaenes

図1 マカ含有成分

花言葉

見ごろ

 耐寒性のある多年草で、地上部は地面に這うようにして成長する。食用部分である塊茎はカブに似た形で10~30gほどになる。色は赤、黄、紫、黒など品種により様々で、現在はほとんどが栽培されたものである。

~元気な植物で 健康増進~

 

 マカはぺルー原産で、南米ボリビア・チリのアンデス地方の高知(3000~4500m)で自生ないし栽培されている。栽培の歴史は古く、2000年前にインカの原住民により始められたとされる。ブロッコリーやワサビ、ダイコン、カブと同じアブラナ科に属し、地下の塊茎部分が食用、健康食品などとして利用される。
 原産地付近では専ら食用として利用され、焼いたり蒸したり煮込んだり、乾燥させた粉末は水や牛乳などと煮ておかゆにしたり、その他発酵飲料マカチャーチの原料にもなる。乳幼児にもミルクに混ぜて食べさせることがある。その他、家畜の繁殖能力を高める目的でマカが利用された、と200年前の記録にある。
 アメリカに紹介されたのは1994年ごろで、滋養強壮、体力づくりに利用されている。日本には1998年にペルーの物産として、フジモリ大統領によって紹介された。強壮剤としての利用が注目されたが、その後、幅広い効果が見つかり、改めて注目されている。

コラム

~ペルーの大事な作物 マカ~

 

 1980年ごろ、ペルーで一度絶滅の機器に直面したマカは、健康増進植物として政府指導のもの栽培され、1994年ごろには生産耕地は40ヘクタール程度になりました。さらに、外国から薬用植物として注目されたことから、国を挙げて生産を増やし、1999年には1200ヘクタールへと拡大しました。
 近年、日本、アメリカ、ヨーロッパでの需要が増加し、ますます原料が必要になると思われましたが、ペルー政府は国の重要な作物としてマカを守るために、他国での生産抑制の目的でマカの生原料の輸出を禁止しました。
 現在では、乾燥原料、抽出物、マカを用いた関連商品のみがペルーから輸出されています。

以下の項目は、その植物の期待される効果を示すものです。

生理活性機能―Benzylglucosinolate

● Benzylglucosinolateの機能性検討3)
 Ikeuchiらは、4週齢のオスのマウスを3群にわけ、benzilglucosinolate 0.015mg/kg、benzilglucosinolate 0.03mg/kg、偽薬として蒸留水を経口で摂取させ、図2のように各項目について評価した。

図2 試験スケジュール

◆ 持久力増強作用
1) 遊泳試験 ― マウス遊泳時間延長

1週間ごとにマウス尾部におもりをつけて水槽で水泳させ、遊泳時間を測定した。結果、benzylglucosinolate投与群において遊泳時間が延長し、持久力の向上が示唆された。(図3)

図3 遊泳時間比較

2) 血中グルコース濃度維持
 実験開始から5週間後に、マウス尾部におもりをつけ水槽で15分間遊泳させた後に60分間休息させ、その間経時的に採血して血中のグルコース濃度を測定した。結果、benzylglucosinolate投与群(0.03mg/kg)において有意にグルコース濃度の減少が抑えられた。(図4)

図4 血中グルコース濃度

3) 肝グリコーゲン減少抑制血中グルコース濃度維持
 実験開始から6週間後に、さらにマウスを運動するグループとしないグループに分け、運動するグループにはマウス尾部におもりをつけ、水槽で15分間水泳させた後に肝臓の肝グリコーゲンの含量を測定した。結果、benzylglucosinolate投与群において、運動をさせたマウスの肝グリコーゲン量が偽薬群と比較して有意に多かった。(図5)

図5 肝グリコーゲン量への影響

◆ 疲労抑制作用
 実験開始から5週間後に、マウス尾部におもりをつけ水槽で15分間遊泳させた後に60分間休息させ、その間経時的に採血して血中の乳酸濃度を測定した。結果、benzylglucosinolate投与群において有意に乳酸の増加が抑えられ、乳酸の蓄積抑制が示唆された。(図6)

図6 血中乳酸濃度推移

◆ 脂肪分解作用
 実験開始から5週間後に、マウス尾部におもりをつけ水槽で15分間遊泳させた後に60分間休息させ、その後に精巣上体脂肪組織の重量を測定した。結果、benzylglucosinolate投与群(0.03mg/kg)において精巣上体脂肪組織の重量が有意に減少し、エネルギー源として効率的に脂肪を燃焼することが示唆された。(図7)

図7 脂肪組織量比較

● 体重増加抑制作用4)
 雌のマウスを4群にわけ、標準食、高脂肪食、高脂肪食+benzylglucosinolate 6 g/kg、高脂肪食+benzylglucosinolate 30 g /kgを摂取させた。結果、高脂肪食+benzylglucosinolate投与群において体重の増加が有意に抑制された。(図8)

図8 マウス体重推移比較

生理活性機能―マカ及びマカ抽出物

● ストレス軽減作用5)
 ラットを用いた実験で、マカ混合餌を投与した群においてストレス軽減が観察された。

 

● 栄養補給6)
 二世代のアルビノマウスをそれぞれ3群にわけ、マカ粉末餌、ゆでたマカの餌、偽薬として通常餌を摂取させた。親世代のマウスにおいて、ゆでたマカを摂取した群の健康・栄養状態が安定していた。子のマウスにおいても、ゆでたマカを摂取した群の成長がもっとも理想的であった。

 

● 抗炎症作用7)
 ホルマリンなどの催炎剤により足せきに浮腫を発症させたラットに、マカ抽出物を経口投与したところ、顕著な抗炎症作用が観察された。

 

● 抗インフルエンザ作用8)
 Juanaらは、イヌ腎臓尿細管上皮(MDCK)細胞を用いた抗ウイルス試験において、マカの根部メタノール抽出物がA型及びB型インフルエンザウイルスの感染によって引き起こされる細胞変性効果、及びMDCK細胞内でのインフルエンザウイルスの増殖を抑制したことを報告した。また、マカの根部メタノール抽出物が示した抗ウイルス作用は市販の抗ウイルス薬であるアマンタジンと類似していた。

 

● 持久力増強作用9)
 雄のマウスに6mg/kgまたは30mg/kgのマカエキスを4週間経口投与し、1週ごとにマウス尾部におもりをつけて水槽で遊泳させ、持続時間を測定した。結果、マカエキス投与群において有意に遊泳時間が延長され、マカエキスの投与による持久力の向上が示唆された。(図9)

図9 遊泳時間比較

● 疲労抑制作用9)
 雄のマウスに6mg/kgまたは30mg/kgのマカエキスを経口投与し、5週間後にマウス尾部におもりをつけて15分間遊泳させた後に60分間休息させ、その間経時的に採血をして血中の乳酸濃度を測定した。結果、マカエキス投与群において有意に乳酸の増加が抑制され、疲労抑制効果が示唆された。(図10)

図10 血中乳酸濃度比較

● 体重増加抑制作用4)
 雌のマウスを4群にわけ、標準食、高脂肪食、高脂肪食+マカエキス6mg/kg、高脂肪食+マカエキス30mg/kgを摂取させた。結果、高脂肪食+マカエキス30mg/kg投与群において体重の増加が有意に抑制された。(図11)

図11 マウス体重推移比較

臨床試験

● 性欲改善作用10)
 マカ1.5g~3.0g/dayを最低8週間摂取した結果、健康な男性の性欲を改善することが示唆された。

安全性

ペルーでの長い食経験により安全性は高いと考えられる。

引用文献・ 参考文献

1)Genyi Li, et al.,Economic Botany55, 2, 255 (2001)

2)Valentova K. et al.,Biomed. Papers147, 2,119 (2003)

3)Ikeuchi M. et al.,J.Health Sci.55,2, 178 (2009)

4)池内 眞弓ら,2006年度日本農芸化学大会発表 公演要旨集, p54 (2006)

5)Aguilar J,Curso Taller Internacional sobre maca, Cultivo, aprovechamiento y conservacion , 20, juilo (1999)

6)Canales M.et al.,Arthivos Lationoam Nutr., 50, 2, 126 (2000)

7)Suzuki I,et al.,医学と生物学, 145 ,6, 81 (2002)

8)Del Valle Mendoza J. et al.,Asian Pac J Trop Med ,7, 1,415 (2014)

9)池内 眞弓ら,2005年度日本農芸化学大会発表 公演要旨集, p117(2005)

10)Pharmacist’s Letter/ Prescriber’s letter Natural Medicine Comprehensive Database, ,5thed. Stockton, CV : Therapeutic Research Faculty (2003)