ラフマ

英名

Luo-bu-ma

学名

Apocynum venetum L.

科目

キョウチクトウ科

別名

羅布麻、紅麻(コウマ)、野麻(ヤマ)、茶葉花(チャヨウカ)、澤漆麻(タクシツマ)

原産地

中国

利用部位

成分

●フラボノイド配糖体

  hyperoside
  isoquercitrin

 

●カテキン類

  (-)-epicatechin
  (+)-catechin
  (-)-epigallocatechin
  (+)-gallocatechin

 

●アポシニン類 3)

  apocyninA
  apocyninB
  apocyninC
  apocyninD

図1 ラフマ含有成分

花言葉

見ごろ

7~9月

 中国から、ヨーロッパ、アジアの温帯にかけて自生する、直立性潅木。樹高1.5~4mで、茶の原料にもなっている葉は、楕円状披針形あるいは卵円形。春に若葉を芽吹き、初夏に薄紅色の花を咲かせる。
 日本国内で、北海道に自生するバシクルモン(Apocynum venetum L. var. basikurumon Hara)は、ラフマ(Apocynum venetum L.)の変種で、成分的にもほぼ同じであることがわかっている。

~心のビタミン剤~

 

 ラフマは、中国に群生する野生植物で、生育地では、古くから葉をお茶にして飲用し日常的に親しまれてきた。現在でも中国では、日本人が緑茶を多く飲むように、ラフマ茶を飲用している。1960~70年代に、ラフマの薬理作用が各種機関により認められ、『中華人民共和国薬典』に掲載されている。
 茶としての飲用の他に、茎が良質の繊維質に富むため、麻のように繊維材料として使用され、衣類や寝具に用いられている 。「羅布麻(ラフマ)」の名前の由来は、原産地である中国の地名 「ロプノール(羅布泊)」と、繊維として同様に使われる「麻」 からきたといわれる。麻と近い種ではない。

以下の項目は、その植物の期待される効果を示すものです。

生理活性機能

● 抗うつ作用
 ラフマ抽出物を用いた動物実験で抗うつ作用を示すことが確認された。ラットにラフマ抽出物を 1日1回14日間経口投与し、強制水泳試験法による抗うつ作用の検討を行った結果、ラフマ抽出物投与群は対照群に比べ抗うつ作用が認められた 4)5)

図2 ラフマ抽出物の活動停止時間短縮作用

 ラフマ抽出物は、コントロールと比較して有意に無動時間を短縮した。

 

● 抗不安作用
 ラフマ抽出物を用いた動物実験で抗不安作用を示すことが確認された。試験1時間前にマウスにラフマ抽出物を経口投与し、高架式十字迷路試験法による抗不安作用の検討を行った結果、ラフマ抽出物投与群は対照群に比べ抗不安作用が認められた 6)

図3 ラフマ抽出物のオープンアーム滞在時間延長作用

 ラフマ抽出物は、コントロールと比較してオープンアーム滞在時間を有意に延長した。
 脳内のホルモンに及ぼす影響についても調べられており、3環系抗うつ薬イミプラミンとの比較がされている。ラフマ抽出物はノルエピネフリン(ノルアドレナリン)に影響するが、セロトニンに影響せず、どちらにも影響を与えるイミプラミンとは作用機序が異なると考えられる7)

 

● 血圧上昇抑制8)
 ラフマ抽出物が血圧に及ぼす作用について 、3種類のラット高血圧モデルを用いて検討した。自然発生高血圧ラット(SHR)、腎性高血圧ラット(腎臓3/4摘出)、食塩誘発性高血圧ラットに対して血圧上昇の抑制が確認された。特に腎性高血圧ラットに対して腎臓機能の改善が見られ、尿量増加及び、尿中Na及びKが増加した。

図4 血圧に対するラフマ抽出物の効果
A:SHR, B: 3/4腎摘出、C: 食塩誘起
●:対照 ■:ラフマ抽出物 口:ラフマ熔煎品抽出物
▲:釣藤散 ○:captopril(血圧降下剤)

● 脂質過酸化抑制作用
 ラット肝ミトコンドリア中ADP-アスコルビン酸存在下および、肝ミクロゾーム中ADP­NADPH存在下において、hyperosideは、脂質の過酸化を強く抑制した9)

表1 脂質過酸化抑制作用

化合物

IC50(μM)

ADP-AsA

ADP-NADPH

hyperoside

3.9

8.6

isoquercitirin

6.0

>20.0

α-tocopherol

6.9

2.8

ラフマ抽出物が、肝細胞組織懸濁液を用いた非酵素的脂質過酸化 と肝細胞ミトコンドリアを用いた酵素的脂質過酸化のいずれをも抑制した10)

 

● 老化予防11)
 老化促進マウス(SAM)に1日100mg/kgのラフマ抽出物を40日間経口投与した後、肝、腎組織中のラジカル消去酵素の活性変化を調査した。その結果、酸化防止に関わる酵素である肝組織中のスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)、グルタチオンレダクターゼが有意に上昇した(表2)。またSAMで正常なマウスよりも低いグルタチオン(GSH)レベルとGSH/GSHジスルフィド比がいずれも改善していた。

表2 肝組織中の酸化還元サイクルの酵素活性におけるラフマ抽出物の効果

SOD
(U/mg protein)

GSH-Px
(U/mg protein)

Glutathine reductase
(nmol/min/mg protein)

正常マウス

28.05± 2.00

179.2±5.9

18.97±0.31

SAM

24.11± 1.20

147.8±7.2

16.64±0.47

ラフマ投与群

27.26± 0.76

157.5±2.3

19.39±0.46

 

● 肝臓保護作用12)
 ラフマ抽出物は,マウスの四塩化炭素またはD-ガラクトサミン/リポ多糖類により誘起される肝機能障害に対し保護作用を示すことが確認された。ラフマ抽出物100μg/ml投与で、このマウス肝細胞の細胞死が完全に阻害された。ラフマ抽出物の肝保護作用活性成分としてepicatechin、hyperoside、isoquercetin等のフラボノイドが確認された。

図5 ラフマ抽出物の肝保護作用

正常マウスの細胞数を100%とし、肝細胞死誘導したものを対照として肝細胞死誘導して種々の処理を行ったときの細胞生存率を示した。
MeOH画分、H2O画分はそれぞれ水抽出物のメタノール可溶性画分、水溶性画分である。

臨床試験

● 睡眠の質の向上
 ラフマ抽出物50mgを7日間摂取することで、ノンレム睡眠の時間割合を増加し、睡眠の質が向上することが近年の研究で解明されている13)14)

図6 ラフマ抽出物の摂取によるノンレム睡眠時間の割合の改善

 

● 抗ストレス作用
 精神ストレスの評価において、自律神経系の非侵襲的生体計測指標の一つに、ヒト唾液のクロモグラニンA(CgA)の濃度変化が用いられている。リラックス効果のあるラフマ抽出物、GABA、およびラフマ抽出物とGABAの併用によるストレス低減効果を摂取前後の 唾液中のCgA の測定により検証を行った。その結果、ラフマ抽出物とGABAの併用によりCgA 増減率は プラセボ摂取条件より有意に低く、ストレス低減効果における相乗効果が認められた15)

図7 摂取前後の唾液中CgA濃度増減率

安全性

長い食経験により安全性は高いと考えられる。

引用文献・ 参考文献

1)『中華人民共和国薬典』

2)『中薬大辞典』,上海科学技術出版社・小学館(編)(1985)

3)W. Fan et al.,Chem.Pharm. Bull.47(7), 1049(1999)

4)V. Butterweck et al.,Biol.Pharm. Bull.24(7), 848(2001)

5)(株)常磐植物化学研究所,特開2002-201139

6)Grundmann et al.,J. Ethnopharmacol., 110, 406-411 (2007)

7)V. Butterweck et al.,Parmacology, Biochemistry and Behavier75 , 557 (2003)

8)Dong-Wook Kim et al.,J.Ethopharmacology,72, 53 (2000)

9)S.Nishibe et al.,Natural medicine.,48 (4), 322 (1994)

10)T. Yokozawa et al.,Natural medicine.,51(4), 325 (1997)

11)T. Yokozawa et al.,J.Traditional Medicines,18, 27 (2001)

12)Q. Xiong et al.,Planta Medica,66, 127(2000)

13)A. Nakata et al., Jpn Pharmacol Ther 46(1). 117-125 (2018)

14)A. YAMATSU et al.,J. Nutr. Sci. Vitaminol. 61(2). 182-187 (2015)

15)日本生理人類学会誌 14(3). 151-155 (2009)