ゲッケイジュ

英名

Laurel

学名

Laurus nobilis L.

科目

クスノキ科

別名

月桂樹、ローリエ、ローレル、スイートベイ、ベイツリー、ベイリーブス

原産地

地中海沿岸

利用部位

葉をハーブとして利用

成分

■モノテルペノイド

    1, 8-cineole

    geraniol

■フェニルプロパノイド

    eugenol

■モノテルペン

    α-pinene

    α-terpinene

■セスキテルペノイド

    deacetyl laurenobiolide

図1 ゲッケイジュ含有成分

花言葉

『勝利』『名誉』『栄光』

見ごろ

4~5月

生育条件

日当たりのよい場所を好んで育つ。

 ゲッケイジュはクスノキ科に属し、樹高10mを超えることもある常緑性の低木~高木である。4~5月には淡黄色の小さな花を咲かせ、黒紫色の果実をつける。葉は芳香がある。

~ゲッケイジュを料理以外の目的に~

 

 ゲッケイジュは地中海沿岸が原産地であり、日本には明治時代に渡来したとされている。ギリシャ神話に登場する太陽神アポロンの木として、勝利と栄光のシンボルとされてきた。オリンピックの勝者が頭にのせる月桂冠は、古代ギリシャの風習を受け継いだものである。葉は芳香があり、臭みを消す効果があることから、料理に使われることが多い。

 近年口臭や歯周病といった悩みから、オーラルケアは男女、年齢問わず幅広いニーズがある市場となっている。歯周病の悪化は歯の損失のみならず、菌を飲み込むことによる誤嚥性肺炎や非アルコール性脂肪肝炎、その他メタボリックシンドロームなどとの関連が報告されている。後述のようにゲッケイジュに含まれるdeacetyl laurenobiolideは、歯周病菌や虫歯菌に対する抗菌効果や消毒殺菌効果が見出され、料理の臭みを取るだけでなく、歯周病予防としての目的にも利用できる素材として今後のブレイクが期待される。

コラム

ゲッケイジュ葉エキスの効果①

 摂取前後の唾液中の口腔内嫌気性菌数を比較するプラセボ対照二重盲検試験が行われた。ゲッケイジュ葉エキスを含むガム2粒 (ゲッケイジュ葉エキス18 mg/粒) またはプラセボガムを2日間6人に摂取させた。毎食後に歯磨剤を使用せずブラッシングし、ガムを1日3回30分間摂取した。その結果、ゲッケイジュ葉エキス摂取群において口腔内嫌気性菌の増殖抑制がみられた (図2)。

図2 ゲッケイジュ葉エキスを含むガム摂取による嫌気性菌のコロニー数

ゲッケイジュ葉エキスの効果②

 ゲッケイジュ葉エキスを含むガム (ゲッケイジュ葉エキス 18 mg/粒) またはプラセボガムを1粒、8人に摂取させ、ガム摂取前後の口臭成分 (硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイド) 残存率を比較する試験が行われた。試験ではニンニク 0.2 gを2回咀嚼した後、VSCと呼ばれる揮発性硫黄化合物をガスクロマトグラフィーによって測定した。その後ゲッケイジュ葉エキスを含むガム、もしくはプラセボガムを20秒間噛み、ガムを3分間口内に残しておいた状態で再度VSC成分を測定した。その結果、ゲッケイジュ葉エキス摂取群において硫化水素およびジメチルサルファイドの残存率の低下がみられた (図3)。以上より、ゲッケイジュ葉エキスの口臭抑制作用が確認された。

図3 ゲッケイジュ葉エキスを含むガム摂取による口臭成分残存率の変化

以下の項目は、その植物の期待される効果を示すものです。

作用

  • ●消化管の鎮痙効果1)
  • ●リウマチや関節炎の症状緩和1)
  • ●抗菌、抗ウイルス効果2) 3)

生理活性機能

● 歯周病菌に対する抗菌作用2,3)

 Deacetyl laurenobiolideおよび植物ヒバから単離された抗歯周病菌成分であるヒノキチオールを液体培地に段階的に希釈し、歯周病原生菌を添加して一定時間培養した。菌の生育が見られなかった最小発育阻止濃度 (MIC) を調べた結果、deacetyl laurenobiolideのMICは16 mg/mL、ヒノキチオールのMICは19 mg/mLとなった。このことから、deacetyl laurenobiolideはヒノキチオールと同等の抗菌活性をもつことが明らかとなった。

● 虫歯菌に対する抗菌作用2,3)

 虫歯菌を塗布した固体培地に滅菌したペーパーディスクを置き、そこに25 mg/mL deacetyl

laurenobiolide溶液 40 mLを浸み込ませて一定時間培養した。その結果、虫歯菌の生育を阻止していることが確認され、deacetyl laurenobiolideが虫歯菌に対して抗菌活性をもつことが明らかとなった。

● 消毒殺菌効果2,3)

 Deacetyl laurenobiolide溶液を歯周病原生菌と混合し、15~300秒の間に計6回100 mLずつ採取した。採取した液を中和用の液体培地と混合し、ウマ血液寒天培地で培養した。菌の生育の有無を確認したところ、deacetyl laurenobiolideと混合してから180秒後および300秒後の培地で菌の生育は見られなかった。このことから、deacetyl laurenobiolideは歯周病原生菌に対し、消毒殺菌効果を示すことが明らかとなった。

安全性

 食薬区分では、葉は「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料) 」に該当し、ローレルの香辛料抽出物が既存添加物として認められている。また、天然香料基原物質リストにローレル (ゲッケイジュ) が収載されている。米国ではGRASに該当する。

引用文献・ 参考文献

1)Dall’ Acqua S.et al.,Chemical and Pharmaceutical Bulletin., 54(8), 1187(2006)

2)Ino C.et al.,Japanese journal of clinical ecology., 22(1), 47(2013)

3)㈱シーエムシー出版,オーラルヘルスケア機能性食品の開発と応用, 203(2013)