四季折々の植物を五感で楽しめる 自然豊かなハーブ園

ハトムギ

英名

Job’s tears.adlay

学名

Coix lacryma-jobi L. var. ma-yuen Stapf

科目

イネ科

別名

シコクムギ(四国麦)、トウムギ(唐麦)

原産地

中国、インドシナ地方

利用部位

穀実を脱殻して乾燥させた子実

成分

デンプン(50%)

粗タンパク質(17%)

粗脂肪(5%)

水分(10%)

ビタミン類

脂肪酸類 など

<生理活性成分>

■脂質

    coixenolide

    monoolein

    trilinolein

■ベンゾキサゾロン

    coixol

花言葉

成し遂げられる思い

見ごろ

8~10月

生育条件

日当たりのよい場所を好んで育つ。

 ハトムギはイネ科の一年生草本である。ムギという名がつくものの、分類上はトウモロコシに近い。ハトムギの穀実は、最外層から内層に向かって、殻、薄皮、渋皮、子実の順に構成される。穀実を脱殻(殻、薄皮、渋皮の除去)、乾燥させた子実はヨクイニン(薏苡仁)と呼ばれ、漢方薬として用いられる。

 ma-yuenという学名は、後漢(西暦100~200年ごろ)に馬援(まえん)という人物によって種植されたという言い伝えに由来する。

 外観は卵形~広卵形を呈し、長さ約6 mm、幅約5 mm、両端はややくぼみ、背面は丸く膨れ、腹面の中央には縦に深い溝がある。また、噛むと弱いにおいがあり、味は僅かに甘く、歯間に粘着する。

~伝統的な美容素材~

 

 ハトムギの子実は、『日本薬局方』にヨクイニンとして収載される生薬であり、尋常性疣贅および青年性扁平性疣贅(いわゆる“いぼ”)に保険適用される。中国の『新農本草経』では上薬に分類され、「筋急拘攣、不可屈伸、風湿痺、下気を主る」とある。また、民間ではいぼ取りに利用されてきた。

 江戸末期の民間の医学書『経験千万』では、「いぼをとるにはハトムギのお茶を飲むと良い」と紹介されている。また、江戸時代の医師である貝原益軒が編纂した『大和本草』には、「ひどいニキビにはハトムギを煎じて飲むと効果がある」と記されている。

 生薬として用いられるのは子実であるが、根から単離されたコイキソール(coixol)は薬理作用として、鎮静・鎮痛・解熱作用、呼吸興奮作用、降圧作用、腸管蠕動運動の抑制、多シナプス反射の抑制などをもつことが報告されている5)。また、根の強力な抗ヒスタミン作用はベンゾオキサジノン系化合物によるものと考えられている。

 ハトムギは古くから生薬として親しまれ、司馬遷の『史記』(紀元前1世紀ごろ)にも記述があるほか、世界三大美女として知られる楊貴妃もその美容効果から愛飲していたとされる。現在、ハトムギはハトムギ茶やシリアルなどの食品として利用されるほか、保湿作用、美白作用といった美肌効果から化粧水、その他のスキンケア用品にも利用されており、健康素材として注目されている。

コラム

ヨクイニンを使った漢方~薏苡仁湯~

 

 古くから美容、いぼ取りとして使われてきたハトムギだが、漢方としてはまた少し違った使われ方もする。漢方としてのハトムギ、即ちヨクイニンは、消炎、利尿、鎮痛、排膿作用を持つことから、浮腫、リウマチ、神経痛などに用いられる。ヨクイニンを配合する漢方の一つ、薏苡仁湯には利尿作用、鎮痛作用があり、腫れて熱や痛み持っているような関節痛、筋肉痛、神経痛に用いられるほか、関節リウマチに伴う関節や筋肉の痛みにも適用する。ヨクイニン以外の配合生薬としては、マオウ、トウキ、ソウジュツ(またはビャクジュツ)、ケイヒ、シャクヤク、カンゾウを含む。

 このようにハトムギは、美容効果以外にも様々な効果を秘めた私たちの身近にある健康素材である。

流通品規格

ヨクイニンおよびヨクイニン末は日本薬局方にてヨウ素試薬による確認試験が規定される。

脱殻していないハトムギは日本薬局方外生薬規格2018にてヨウ素試薬による純度試験が定められる。

以下の項目は、その植物の期待される効果を示すものです。

作用

  • ●皮膚色素沈着の改善1)
  • ●紅斑の軽減1)
  • ●肌の脂質改善2)
  • ●水分保持2)
  • ●疣贅、コンジローマの改善3)

生理活性機能

● 疣贅・伝染性軟属腫・尖圭コンジローマ

 ハトムギが疣贅、伝染性軟属腫(水イボ)、尖圭コンジローマに効果があるという報告がある。作用機序については、完全には解明されていないものの、ヨクイニンが単球、マクロファージ系細胞に作用し、インターロイキン-1の産生増強によって抗体産生細胞を増強すると示唆されており6)、免疫賦活作用が関与している可能性が考えられる。また、NK細胞や細胞障害性T細胞を活性化したという報告7, 8)もあり、これらの細胞の活性化が抗ウイルス作用をもたらすと考えられている。

● 抗腫瘍作用・抗紫外線作用9)

 脱殻をしたハトムギの熱水抽出エキス(ヨクイニン)および脱殻をしていないハトムギの熱水抽出エキス(ハトムギエキス)、さらに、ハトムギの有用成分であるMonooleinおよびTrilinoleinはヒト由来癌細胞(乳癌細胞、肺癌細胞、喉頭癌細胞)に対し細胞増殖抑制作用を示した(図2~4)。また、ヒトリンパ腫由来のRaji細胞と発癌プロモーターのTPA(12-O-Tetradecanoylphorbol-13-acetate)を用いた発癌予防作用の試験においても、特異抗原発現率を有意に減少させ、発癌予防作用を示した(図5)。

 さらに、紫外線照射前後の細胞形態変化により抗紫外線作用を評価した結果、ヨクイニンおよびハトムギエキス、Monoolein、Trilinoleinは紫外線照射前後いずれの添加においてもマウス皮膚上皮由来正常細胞の細胞障害を有意に抑制した(図6~7)。

 以上のことから、ハトムギエキスおよびその有用成分であるMonoolein、Trilinoleinは抗腫瘍、抗炎症作用を有することが示された。

図2 癌細胞増殖抑制作用(乳癌細胞:MCF-7)

図3 癌細胞増殖抑制作用(肺癌細胞:A-549)

図4 癌細胞増殖抑制作用(喉頭癌細胞:Hep-2)

図5 発癌予防作用

図6 抗紫外線作用(UVB照射前被験物質添加)

図7 抗紫外線作用(UVB照射後被験物質添加)

● 活性酸素抑制作用・抗炎症作用

 ハトムギは食細胞の代謝機能を抑制することにより活性酸素の産生量を低下させることが報告されている10)。また、ハトムギの皮のエタノール抽出物においても活性酸素抑制作用や抗炎症作用が認められた11)

● 内分泌作用

 ヨクイニンを主剤とする方剤により難治性無排卵症患者の視床下部機能が著しく改善されたという報告があり、ヨクイニンから排卵誘起作用物質が同定されている12)。また、ハトムギの皮のメタノール抽出物では、プロゲステロンやエストロゲンの生成抑制作用13)や精巣のライディッヒ細胞からのテストステロン放出抑制作用14)が認められた。

臨床試験

○ 顔面皮膚色素沈着度(シミ)および紅斑の軽減1)

 顔に色素沈着が認められる20歳以上80歳未満の女性83名を対象としたランダム化プラセボ対照比較試験において、ハトムギエキス2 g/dayまたは4 g/dayまたはプラセボを朝・夕2回、8週間摂取させたところ、ハトムギエキス4 g/day摂取群において皮膚色素沈着量および紅斑度が有意に減少した(図8, 9)。

 このことから、ハトムギエキスは皮膚色素沈着量および紅斑度を改善する効果を持つことが示唆された。また、試験実施時期は、紫外線の多い7~9月であり、ハトムギエキスには紫外線対策効果も期待できる。

図8 顔面皮膚色素沈着度

図9 顔面紅斑度

○ 脂質改善・水分保持2)

 20歳以上60歳未満の女性44名を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験において、ハトムギエキス末1500 mg/dayまたは1000 mg/dayを12週間摂取させたところ、ハトムギエキス末1500 mg/day群の左腕において肌の脂質の値がプラセボ群と比較して有意に低下した(図10)。また、前額部の水分値はプラセボ群で低下したのに対して、ハトムギエキス末1500 mg/day群では上昇した。(図11)。

 このことから、ハトムギエキスは肌の脂質を減少させるとともに水分を保持する効果を持つことが示唆された。肌の脂質改善はニキビ予防に、水分保持は乾燥肌対策につながるものと期待される。

図10 脂質(左腕)

図11 水分(前額部)

安全性

子宮収縮を促進する可能性があるため、妊娠中は使用を避ける。

また、授乳中の安全性は十分な情報が見当たらないため過剰摂取は避ける4)

 

推奨量
1日1.0~2.0 g(尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)および青年性扁平性疣贅(せいねんせいへんぺいせいゆうぜい)に用いる場合)

引用文献・ 参考文献

1)鈴木信孝ら,日本補完代替医療学会誌, 15(2), 85(2018)

2)後藤純平ら,新薬と臨牀, 66, 771(2017)

3)鈴木信孝ら,日本補完代替医療学会誌, 15(2), 133(2018)

4)「健康食品」の有効性・安全性情報 ホームページ 「健康食品」の素材情報データベース 「ハトムギ」

https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail517.html

5)五味田裕ら,日本薬理学雑誌, 77(3), 245(1981)

6)溝口靖紘ら,和漢医薬学会誌, 3(3), 170(1986)

7)金田達成ら,臨床病理, 40(2), 179(1992)

8)Hidaka Y.et al.,Biotherapy., 5(3), 201(1992)

9)鈴木里芳ら,日本補完代替医療学会誌, 10(2), 75(2013)

10)丹羽靭負ら,皮膚科紀要, 81(2), 321(1986)

11)Huang DW.et al.,Journal of Agricultural and Food Chemistry., 57(6), 2259(2009)

12)Kondo Y.et al.,Chemical and Pharmaceutical Bulletin (Tokyo)., 36(8), 3147(1988)

13)Hsia SM.et al.,Experimental Biology and Medicine (Maywood)., 232(9), 1181(2007)

14)Hsia SM.et al.,Phytotherapy Research., 23(5), 687(2009)