リョクチャ

英名

Green tea

学名

Camellia sinensis L.

科目

ツバキ科

別名

原産地

中国

利用部位

成分

●カテキン
 (-)-epigallocatechin gallate(EGCG)
 (-)-epigallocatechin(EGC)
 (-)-epicatechin gallate(ECG)
 (-)-epicatechin(EC)
●アルカロイド
 caffeine
●アミノ酸
 theanine

図1 カテキン類

 

表1 各種茶中のカテキン含量(g/100g茶葉)2)

茶の種類

EC

ECG

EGC

EGCG

カフェイン

緑茶(煎茶)

0.91

1.76

3.36

7.53

2.8

ウーロン茶(鉄観音)

0.62

2.90

0.44

6.85

2.3

紅茶(ダージリン)

0.67

3.92

tr.

4.02

3.7

カフェイン(caffeine)は、人体では中枢神経を興奮させる作用を持つ。
また、テアニン(theanine)は甘い旨味を呈する。これはカフェインとは逆の鎮静作用を示す3)

花言葉

『追憶』

見ごろ

10~11月

 茶はツバキ科の植物で、原産地は揚子江、メコン川、イラワジ川、プラマプトラ川などの大河上流が集まる中国西南部の雲南省からビルマ北部、アッサム地方に渡る山地と考えられている。我が国では、温暖で日当たりがよく、水はけの良い丘陵地にて栽培されている。茶の種類は大きく2つに分けられ、灌木で樹高3 m、葉の大きさが9×3 cmで寒さに強い中国種(Camellia sinensis L. var. sinensis)と、喬木で高さ18 m、葉の大きさ12×4 cm以上で寒さには弱いアッサム種(Camellia sinensis L. var. assamica)に分けられる。緑茶は中国種が起源である。

~良薬は口に渋し~

 

 平安時代の末、宋から帰国した栄西により、日本に茶が伝えられた。さらに栄西は「喫茶養生記」という書物の中で茶の効用を説き、飲用を勧めた。当時は上流階級のみに茶は飲用されていたが、室町時代以降一般に広まり、湯を注いだものを飲む、掩し茶が一般化した。江戸時代には蒸し煎茶が、幕末には玉露が考案され日本茶の基礎が確立した。一般的に飲用される茶類は、緑茶、紅茶、烏龍茶等があるが、これらはすべて同じ茶樹の葉からつくられており、加工の仕方により緑茶、紅茶、烏龍茶等に分けられる(図2)。

図2 茶の種類1)

 茶の機能性について注目されたのはつい最近のことで、緑茶の産地である静岡県中川根町では、胃ガンの発生率が日本全国の平均よりも低いという疫学的調査から、茶の機能性についての研究が始まった。現在では、茶の抗ガン作用のほかにも抗酸化活性、高血圧予防、抗菌作用など多くの機能が解明されている。また、最近では、catechin含量を増量した飲料(特定保健用食品)が体脂肪を低減するとして人気を呼んでいる。

流通品規格

総ポリフェノールまたは総catechin含量の規定が設けられる。
日本健康・栄養食品協会ではポリフェノール(カテキン換算)の規定を定めている。

以下の項目は、その植物の期待される効果を示すものです。

作用

  • ● 抗酸化作用
  • ● 抗変異原作用
  • ● 抗発ガンプロモーション活性
  • ● コレステロール上昇抑制作用
  • ● 抗腫瘍活性
  • ● 体脂肪低減作用
  • ● 血圧降下作用
  • ● 血糖降下作用
  • ● 抗菌作用

生理活性機能

● 抗酸化活性
 緑茶の持つ抗酸化活性については多くの報告がある。大豆油にカテキン類を添加し、その抗酸化活性を測定したところ、4種のカテキンのうちEGCがもっとも強い活性を示した4)
 また、茶カテキンのラードに対する抗酸化活性を測定した(図3)。その結果を等モル換算したところ強さはEC<ECG<EGC<EGCGの順であり、ピロガロール型(EGC、EGCG)の方は活性が強く、さらにガレート型のEGCGの方は活性が高いことが報告されている5)

図3  ラードにおけるカテキン類の酸化防止効果

 生体内酸化が老化やあらゆる疾病に関与するということが注目され始めた頃、茶カテキンの生体内での抗酸化作用の研究がスタートした。茶カテキンの一つであるEGCGは、肝臓中のミクロソームやミトコンドリアにおいて脂質の酸化を抑制することが認められた6)
 ラットにカテキン含有飼料を与えたときの血漿中や臓器(肝、腎)での脂質代謝への影響を調べたところ、1.0%カテキン含有飼料群は12~18ヶ月投与で最大25%の過酸化脂質の上昇を抑えた(図4)。また、血中コレステロールも30%低い数値を示した7)

*BHA:ブチルヒドロキシアニソール

図4 ラット血漿及び臓器過酸化物に対するエピカテキンの影響
TBARS:チオバルビツール酸(TBA)と過酸化脂質との反応物

● 抗がん作用
 茶の産地である静岡県では胃がん発生率が少ないという疫学的な調査から、茶の抗がん作用について注目された。種々の細胞において、緑茶抽出物、特にカテキンのEGCGに抗発ガンプロモーション活性が認められている8) 9)。肺がん細胞PC-9に対してのカテキンの効果を検討したところ、EGCG、EGC、ECGは濃度依存的にがん細胞の増殖を抑制した(図5)10)。また、カテキンには、がん細胞選択的にアポトーシス(細胞死)を誘導する作用11)や、血管内皮増殖因子(VEGF)を阻害することによりがん細胞の血管新生を抑制する作用12)など、様々な観点からの抗がん作用が報告されている。

図5 ヒト肺がん細胞PC-9に対するカテキン類の影響

 埼玉県のある地域の人、8552人の生活習慣調査のデータをもとにがん死亡年齢と1日の緑茶飲用量をまとめたところ、1日に10杯以上飲む人のがん死亡年齢は1日3杯以下の人に比べ女性で7歳、男性で5歳高くなることが報告されている13)

 

● 抗菌作用及び抗う蝕作用
 カテキン類は、黄色ブドウ球菌、ウェルシュ菌、セレウス菌、腸炎ビブリオ菌、アエロモナス菌などの食中毒菌に対して抗菌作用をもつことが見出されている(表2)16)。また、虫歯の原因菌であるStreptococcus mutansや成人性歯周炎の原因菌であるPorphyromonas gingivalisの増殖及び歯への付着を阻害することが報告されている17)

表2 食中毒細菌に対するカテキンの最小発育阻止濃度(MIC)

食中毒細菌

最小発育阻止濃度(ppm)

EC

ECG

EGC

EGCG

ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)

>800

800

150

250

腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)

800

500

300

200

V. fluvialis

800

300

300

200

V. metschnikouii

>1000

>1000

500

1000

ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)

>1000

400

1000

300

セレウス菌(Bacillus cereus)

>1000

600

>1000

600

プレシオモナス菌(Plesiomonas shigelloides)

700

100

200

100

アエロモナス菌(Aeromonas sobria)

>1000

700

400

300

ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)

>1000

<100

300

<100

● 血圧降下作用
 高血圧マウスに緑茶抽出物を投与した時の、心臓血管での血圧を測定したところ、緑茶抽出物2 mg及び4 mg投与群において、顕著な血圧降下作用を認めた(表3)18)

表3  緑茶抽出物投与時の血圧への影響

グループ

投与群
(mg/kg/日)

最高血圧
(mmHg)

平均血圧
(mmHg)

最低血圧
(mmHg)

対  照

203.2±5.1

163.0±3.4

144.0±3.4

緑茶抽出物

2

194.1±4.1

152.4±4.1

133.3±4.3

緑茶抽出物

4

188.4±4.2*

141.9±7.5*

122.2±7.0*

*:p<0.05

● 血糖降下作用
 ラットにデンプンを与えた後、カテキンを添加した水を与えた時に、血糖値及びインスリン量を測定したところ、カテキンを60~80 mg与えた群では顕著な血糖値の低下が認められた。またショ糖を与えた後、カテキンを与えた場合80 mgで顕著な血糖値の低下が認められた(図6)19)

図6 ショ糖摂取後カテキン投与の血糖値及びインスリン量への影響

 そのほか、肝機能障害予防効果20)、腎不全抑制効果21)、平滑筋増殖作用22)、コレステロール上昇抑制作用23) 24)、HDL-コレステロール上昇作用25)などが報告されている。

臨床試験

○ 体脂肪低減作用
 茶カテキンの摂取によりコレステロールや脂肪の吸収が抑制された。また、緑茶抽出物の摂取により、エネルギー消費量の増加や脂質代謝の亢進が認められている。健常男性10人に3回にわたり緑茶抽出物、カフェイン、偽薬のいずれかを摂取する機会を与え、同一環境下におけるエネルギー消費量を測定した。その結果、緑茶抽出物を摂取した場合、偽薬、カフェインに比べ、1日のエネルギー消費量が有意に増加した(表4)15)

表4 緑茶抽出物の昼間、夜間、1日のエネルギー消費量(kJ)に及ぼす効果

 

偽  薬

カフェイン

緑 茶

昼  間

6463±386

6547±383

6754±352*

夜  間

3075±149

3053±148

3112±140

合計(1日)

9583±521

9599±518

9867±488*#

*(偽薬と比較):p<0.05、#(カフェインと比較):p<0.05

 肥満度「普通体重~1度」に相当する80人(男性43人、女性37人)に対し、二重盲検によりカテキン類の体脂肪に対する効果を調べた。カテキン588 mgを含む茶飲料340 mLを1日1本12週間摂取したところ、コントロール群に比べ、体重や腹部全脂肪量、腹部内臓脂肪量が有意に減少した(図7)26)。したがって、カテキン類の摂取は、肥満やそれに関係した生活習慣病の予防、改善に寄与すると考えられる。

図7 カテキン類の体重に対する効果
コントロール群:n=41、カテキン群:n=39。平均±S.E.M.を示す。**:p<0.01

推奨量

 1日10杯程度のお茶。
 (-)-epigallocatechin gallateとして1日250~500 mg相当

安全性

日本での長い食経験により、安全性は確立されているが、caffeine、タンニンを含有するのでそれらの生理作用に対する注意が必要である。

引用文献・ 参考文献

1)静岡県茶業会議所.,新茶業全書, 静岡茶業会議所 (1988)

2)西岡五夫,「茶の化学」, 朝倉書店

3)瀧原 ら,「新しい食品素材と機能」, シーエムシー出版, 141 (1997)

4)梶本五郎,日食工誌, 10, 365 (1963)

5)松崎妙子 ら,農芸化学会誌, 59, 129 (1983)

6)T.Okuda et al.,Chem. Pharm. Bull., 31, 1625 (1983)

7)富田勲,FFI JOURNAL.160 , 34 (1994)

8)中村好志 ら,日本薬学会第106年会講演要旨集,617 (1987)

9)吉沢 ら,Phytotherapy Research ,1, 10 (1987)

10)S. Okabe. et al.,Jpn. J. Cancer Res.,88, 639 (1997)

11)S. Gupta et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,98, 10350 (2001)

12)Y.D.Jung et al.,Br. J. Cancer,84, 844 (2001)

13)藤木博太,ファルマシア,34(3), 223 (1998)

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16)瀬戸龍太 ら,「新食品機能素材の開発」,シーエムシー出版, 210 (1996)

17)S. Sakanaka et al.,Biosci. Biotech. Biochem.,60, 745 (1996)

18)T. Yokozawa et al.,Biosci. Biotech. Biochem.,58, 855 (1994)

19)N. Matsumoto et al.,Biosci. Biotech. Biochem.,57, 525 (1993)

20)K. Imai et al.,BMJ.,310, 693 (1995)

21)T. Yokozawa et al.,Biosci. Biotech. Biochem.,60, 1000 (1996)

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23)K. Muramatsu et al.,J. Nutr. Sci. Vitaminol ,32, 613 (1986)

24)福与眞弓 ら,栄養と食糧,39, 495 (1986)

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26)土田隆 ら,Prog. Med.,22, 2189 (2002)