キャッツクロー

英名

Cat’s claw

学名

Uncaria tomentosa (Willd.) DC., Uncaria guianensis (Aubl.) Gmel.

科目

アカネ科

別名

Una de gato ウーニャ・デ・ガト(スペイン語)、Garabato amarillo

原産地

ペルー

利用部位

樹皮、葉

成分

■オキシインドールアルカロイド2)
 mitraphylline
 isopteropodine
 rhynchophylline
 pteropodine
 isorhynchophylline
 isomitraphylline

■トリテルペノイド3)
 quinovic acid glycoside

■ステロール4)
 β-sitosterol
 stigmasterol
 campesterol

図1 キャッツクローの含有成分

花言葉

見ごろ

 キャッツクローは、蔓状に木々に巻きついて成長する双子葉植物で、長さ30m以上にもなる。幹の直径は約10cmである。樹皮を切ったときの色が、U. tomentosaは黄色、U. guianensisは赤色という違いがある。葉の付け根に猫の爪のようなとげが生えていることから、「猫の爪」という意味の名がついている。
 アンデス山脈の東部の熱帯雨林には、有益な植物が多く自生しているが、その1つがキャッツクローである。

~ペルー産の健康素材~

 

 キャッツクローは、リウマチの特効薬としてインカ帝国の時代から利用されてきた。ペルーの先住民は病気を治すためにこの木を探し回り、そのため「幻の樹木」とも呼ばれたという。南米熱帯雨林、しかもアッパージャングル(800m位の山の森林)にのみ自生していて、1haに数本しか生えていない貴重なものであったが、最近では、ペルーのアマゾンの貧困地帯にこのキャッツクローを植林するプロジェクトにより、多く栽培されるようになった。また、コロンビアの先住民は、赤痢の治療にこの木を煎じて飲んでいた。同様の使い方はギアナにもあるといわれる。エクアドルに属するアマゾン地域のケチュア族には、子どもが生まれるとその葉を足にこすりつけ、早く歩けるようにとまじなう風習もあるなど、多くの伝承がある植物である。
 近年になって、抗がん作用や抗炎症作用が明らかになってきており、ペルーの輸出品の中でも割合が高くなっている。アメリカでは数年前から人気が上昇し、ハーブの売上ベスト20に入っている。1994年にはWHOで、副作用のない抗炎症剤として認められた。
 同じく’Una de gato’と呼ばれている、同属のUncaria guianensisがあるが、これもキャッツクローと同様の効果を示すことが報告されている。この学名の中の’guianensis’は、ギアナ原産の意味である。

コラム

コカインの代わりにキャッツクローを…「フジモリ計画」

 

 1995年、ペルーのアルベルト・フジモリ大統領は、薬用植物のキャッツクローをアマゾンの貧困地帯に植林するプロジェクト、「フジモリ計画」に着手した。貧しい人々が現金収入を得るために栽培するコカインの原料コカを、キャッツクローに切り替えて、麻薬撲滅と貧困解消を図ろうというねらいである。事業に取り組む、ペルー農業省自然資源協会会長ミゲル・ベントゥーラ氏は、「キャッツクローはペルーの社会問題を解決する“かぎ”、海外での利用者が増えればペルーの将来も明るい」と話している。

 このプロジェクトにより、人工栽培の技術が開発され、世界中の人々が比較的簡単にその優れた効果を享受できるようになった。アメリカなどでの人気も、「健康づくりがペルーの役に立つなら一挙両得」と広がっている17)

流通品規格

mitraphylline等アルカロイド含量の規定が設けられる。

以下の項目は、その植物の期待される効果を示すものです。

作用

●リウマチ改善
●抗炎症作用
●抗アレルギー作用
●免疫力改善・増強

生理活性機能

キャッツクローは、胃腸系などの様々な症状の改善に用いられる。isopteropodineをはじめとするアルカロイドが免疫機構のマクロファージ(食細胞)の働きを高め、免疫力を増強する働きを持つことが報告されている2)。さらに抽出物には抗酸化作用が報告され、発がん性物質などによる突然変異を抑制すると考えられる5) 6) 7) 8)。キャッツクローの水抽出物は、ヒト白血病細胞ならびにEBウイルス関連Bリンパ腫に対して増殖阻害活性を示し、アポトーシス誘導による抗がん効果が報告されている9)。また、キャッツクロー含有成分の一つであるquinovic acid glycosidesでは消炎活性や抗ウイルス作用が報告されており3) 10) 11)、HIVへの効果も期待されている。キャッツクローのアルコール抽出物がマウスで抗炎症作用を有することが確認され12)、また、マクロファージのTNFαおよびPGE2の産生を抑制することが細胞レベルで確認されている(図2、3)13)。キャッツクローの含有成分のうち、ステロール類やmitraphyllineに抗炎症作用があることが報告されている4) 14)

図2 TNFα産生抑制効果

※LPS:リポ多糖、炎症性サイトカイン分泌を促進する

図3 PGE2産生抑制効果

※LPS:リポ多糖、炎症性サイトカイン分泌を促進する

Uncaria tomentosa:10 µg/mL

臨床試験

〇 リウマチ性関節炎の改善15)

 リウマチ性関節炎の患者40人を対象として、キャッツクロー(U. tomentosa)抽出物またはプラセボを用いた二重盲検試験を行った。関節痛が減少した患者はキャッツクロー抽出物摂取群では53.2%、プラセボ摂取群では24.1%で、キャッツクロー抽出物による改善が見られた(図4)。このことからキャッツクロー抽出物がリウマチ性関節炎による関節痛を軽減する効果を有することが示唆された。

図4 関節痛の軽減作用

〇 膝関節炎の改善13)

 膝関節炎の患者に対し、キャッツクロー(U. guianensis)凍結乾燥物を4週間にわたり摂取させた。1週目から運動時の痛みならびに疾患活動性スコア(病気の活動性)が減少した。2週間、4週間の継続摂取によりさらに効果が得られた(図5、6、7)。このことからキャッツクローが膝関節炎による痛みを軽減する作用を有することが示唆された。

図5 運動時の痛み

図6 疾患活動性スコア(患者評価)

図7 疾患活動性スコア(医師評価)

〇 進行固形がん患者のQOL(生活の質)改善16)

 平均余命が2か月以上である進行固形がん患者51名を対象にキャッツクローの乾燥エキス100mgを含有する錠剤を1日3回摂取させた。アンケートによる評価の結果、摂取前と比較して有意にQOLならびに社会生活能力が改善した(p = 0.0411、p = 0.0341)。さらに疲労感の軽減も確認された(p = 0.0496)。このことから、キャッツクローは進行固形がん患者のQOL改善、疲労軽減に有用であることが示唆された。

安全性

妊娠中の服用、3歳以下の幼児への投与を避ける。1)

引用文献・ 参考文献

1)Jones K.,“Cat’s claw: Healing vine of Peru”, Sylvan Press, Seattle, ()

2)Bozena B. et al.,Planta Medica55, 419 (1985)

3)Aquino R. et al.,Phytochemistry45, 1035 (1997)

4)Senatole A. et al.,Bollettino della societa italiana di biologia sperimentale, 56, 547 (1989)
5)Desmarchelier C.et al.,Anales la Reqal Academia de Farmacia62, 357 (1996)

6)Ostrakhovich E. A.et al., Khimiko Farmatsevicheskii Zhurnal31, 49 (1997)

7)Sandoval Chacon M. et al.,Alimentary Phamacology and Therapeutics12, 1279 (1998)

8)Rizzi R. et al.,Journal of Ethnopharmacology38, 63 (1993)

9)Sheng Yezhou, et al.,Anticancer Research18, 3363 (1998)

10)Aquino R.  et al.,Journal of Natural Products52, 679 (1989)

11)Aquino R. et al.,Journal of Natural Products54, 453 (1991)

12)Jose L. et al.,Journal of Ethnoparmacology81, 271 (2002)

13)Piscoya J.et al.,Inflamm Res., 50, 442 (2001)

14)Rojas-Duran R. et al.J. Rheumatol., 143, 801 (2012)

15)Mur E. et al.J. Rheumatol., 29, 678 (2002)

16)de Paula L.C. et al.The Journal of Alternative and Complementary Medicine., 21, 22 (2015)

17)毎日新聞1998年2月13日