バナバ

英名

Banaba

学名

Lagerstroemia speciose Pers

科目

ミソハギ科

別名

オオバナサルスベリ、Queen crape myrtle、紫薇

原産地

東南アジア  ~ オーストラリアの熱帯・亜熱帯地方

利用部位

成分

●トリテルペノイド
 corosolic acid(CA), maslinic acid
●ポリフェノール
 Ellagic acid, lagertannin
●タンニン類
 lagerstannin A, ellagitannin
●その他
 ミネラル(亜鉛、マグネシウム), α-リノレン酸

図1 バナバ葉含有成分

花言葉

『雄弁』『愛嬌』『不用意』

見ごろ

7~9月

 東南アジア原産で、亜熱帯地方の気候を好み、日本では栽培できない。木の高さは5~20m、花は直径4~8cmで白から薄いピンク色をしている。丸みを帯びた葉は大きいもので長さ20~30cm以上にもなる。葉を採集後約3ヶ月で新芽が出てくる。木の幹はやや滑らかで、枝の張りが広範囲にわたる。

~糖尿病等の生活習慣病予防に~

 

 白から薄いピンク色の大きな花を咲かせるバナバは、熱帯地方において重要な街路樹である。バナバという呼名はフィリピンにおける愛称で、フィリピンでは葉から抽出した液をお茶として、また糖尿病の民間療法として古くから飲用している。フィリピン以外の東南アジアでも糖尿病治療、肥満予防、便秘改善、皮膚病治療の民間薬として飲用され、その歴史は1000年以上もさかのぼる。日本ではダイエット茶として紹介されブームになった。飲用している人たちに対するアンケートでは、糖尿病、アトピー性皮膚炎、肥満、生理痛が改善されたとの報告がある。成分に関する研究が近年多く行われ、葉の抽出物に非常に強い抗酸化活性が見出された。このことにより、活性酸素発生に由来する様々な病気予防への利用の可能性が模索されている。また、アルコールにより抽出されるコロソリン酸は糖尿病疾患において血糖値を下げることが報告されている。
 葉の利用以外に、幹の部分は家具やフローリング、建築材として用いられることもあり東南アジアでは利用価値の高い植物である。また、フィリピン政府ではバナバの栽培を奨励し、バナバ葉やバナバ木材の利用を国内外で推進している。

流通品規格

corosolic acid含量の規定が設けられる。

以下の項目は、その植物の期待される効果を示すものです。

作用

  • ●血糖低下作用
  • ●コレステロール上昇抑制
  • ●抗炎症作用

生理活性機能

● ブドウ糖輸送体の活性増強効果
 細胞膜上にはブドウ糖輸送体が存在し、細胞がエネルギーを獲得するのに最も重要な役割を担っている。すなわち、細胞が活動する上で必要なエネルギーを作り出す基となるブドウ糖を血中より細胞に取り込むという機能を果たしている。
 この輸送活性が上昇すれば、ブドウ糖の細胞への取り込みが行われ、血液中の糖含量が低下すると考えられる(インスリン様作用)。
 バナバ抽出物を、膜上にブドウ糖輸送体を多く有するマウスエールリッヒ腹水ガン細胞に添加した結果、5μg/mlで45%輸送活性が上昇した。この活性を指標に抽出物を分画したところ、corosolic acidに強い増強活性があることが見出された(図2) 1)

図2. バナバ抽出物のブドウ糖輸送体活性増強効果
バナバ抽出物無添加時のブドウ糖取り込み量を100%とする。

● 血糖低下作用2)
 バナバ抽出物を樹脂に吸着させて非吸着画分と吸着画分に分け、遺伝性糖尿病マウスに投与した。その結果、吸着画分投与群は、対照群に較べて明らかに血糖値が低かった(図3)。

図3. バナバ抽出物投与時の血糖値変化

● 血中総コレステロール低下作用3)
 バナバ葉抽出物を6週間にわたり遺伝性糖尿病マウスに投与した。その結果、対照群のコレステロール値が195mg/dlであったのに対し、投与群では154mg/dlを示し、優位なコレステロール低下作用が見られた。

 

● 抗肥満作用4)
 バナバ抽出物を遺伝的糖尿病雌マウスに投与した結果、通常食のマウスと比較し、体重、体脂肪や肝臓脂肪が有意に減少した。

 

● 脂肪細胞のグルコース取り込み促進作用
 バナバ抽出物の成分であるellagitanninは、ラットの脂肪細胞においてグルコースの取り込みを促進した5)
 また、チャイニーズハムスターの卵巣細胞においては、インスリン様作用が観察された6)

 

● 抗癌作用7)
 バナバから単離された五員環トリテルペンであるCAは、様々な癌細胞株に対して抗癌作用があることが知られている。しかし、ヒト結腸癌細胞に対するCAの抗癌活性や作用機構は未解明のままである。そこで、HCT116ヒト結腸がん細胞の生存率とアポトーシスに対するCAの効果を検討した。CAはHCT116細胞の生存率を濃度依存的に抑制し、アポトーシスの特徴であるクロマチン凝集などを引き起こした。CAはカスパーゼ-8,-9,-3を活性化することで、アポトーシスを誘導した。

臨床試験

〇 糖尿病患者における血糖値低下作用
 糖尿病患者を2グループに分け、(1)0~4週間バナバ抽出物、4~8週間偽薬、(2)0~4週間偽薬、4~8週間バナバ抽出物を服用してもらった。その結果、バナバ抽出物投与時のみに血糖値低下が確認された(図4)8)

図4. バナバ抽出物投与時の血糖値の変化

別の試験で、糖尿病患者にバナバ抽出物を2週間投与した結果、投与量に依存して血糖値が低下した9)

安全性

フィリピンでの長い食経験により安全性は確立していると考えられる。

引用文献・ 参考文献

1)K. yamasaki et al.,Chem Pharm Bull.41(12) ,2129-2131 (1993)

2)(株)伊藤園,特開平 7-228539

3)(株)伊藤園,特開平 7-228538

4)Suzuki U. et al.,J. Nutr. Vitaminol (Tokyo)45,6, 791 (1999)

5)Hayashi T., Yamasaki K. et al.,Planta Med , 68, 2 173 (2002)

6)Hattori K., Yamasaki K. et al.,J. Pharmacol. Sci., 93,1, 69 (2003)

7)Sung B. et al.,Int Mol Med.33 (4), 943-9 (2014)

8)池田義雄ら,薬理と治療,27(5), 829 (1999)

9)Judy W. V. et al.,J. Ethnophracol.,87, 1, 115 (2003)