Olive
Olea europea L.
モクセイ科
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中近東一帯、地中海沿岸地域、黒海沿岸地域等
果実、葉
●セコイリドイド配糖体
oleuropein
oleuroside
ligstroside
oleoside-7,11-dimethylester
●フェノール類
hydroxytyrosol
chlorogenic acid
verbascoside
●トリテルペン類
oleanoic acid
maslinic acid
●フラボノイド類
luteolin
luteolin-7-O-glucoside
図1 オリーブ含有成分:oleuropein
『平和』『安らぎ』『知恵』『勝利』
5~6月
オリーブ(Olea europea L.)は双子葉植物で常緑の小高木または低木樹で、樹高2~10mにもなる。葉は革質の長楕円ないし皮針形で、その表面は暗緑色を呈し微毛が散在し、裏面は微毛が密生していてやや光沢を呈している。初夏、葉腋に総状花序をだし、小さな黄白色の芳香のある花をつける。果実は核果、円形または楕円形、緑色から赤紫を経て紫黒色にし、果肉は渋く、紡錘状の硬い種子を1つ有する。
オリーブは現在のシリア、イラク、イスラエルといった中近東一帯が起源といわれており、紀元前3000~2000年ころから栽培が始まったと考えられている。古くから地中海沿岸地方へ伝わり、現在ではスペイン、イタリア、イギリス、ギリシアなど地中海沿岸地域、黒海沿岸地域、南米、メキシコ、アメリカ、南アフリカ、中国、オーストラリア、日本(四国の香川県小豆島が有名)で栽培されている。
オリーブ葉は新約聖書では「生命の樹」と呼ばれ、旧約聖書・創世記では洪水の終焉の証としてノアの箱舟に鳩がオリーブの枝をくわえて帰ったという話も記載されている。また、ギリシア神話では女神アテネがオリーブを創ったことになっており、傷、病気を癒し、栄養補給などの力を与えたとしている。
オリーブ油は広く使われており馴染み深いものだが、オリーブ葉も茶、染料、薬(降圧、解熱、利尿、リウマチ、炎症、低血糖、血管拡張など)として利用されてきた。19世紀に入りオリーブ油やオリーブ葉に豊富に含まれている苦味成分である「oleuropein」にウイルスやバクテリアの増殖を防止する強い抗菌活性が見つかり、自然の抗生物質としての働きをすることが明らかとなった。さらに生活習慣病の予防、抗酸化作用、免疫増強作用、抗アレルギー作用などについて注目されている。
● 抗菌・抗ウイルス作用
オリーブ葉の苦味成分であるoleuropeinは乳酸菌、グラム陽性菌、グラム陰性菌1)、サルモネラ菌、ビブリオ菌、黄色ブドウ球菌2)、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルスA3)などの様々な病原菌、ウイルスに対して増殖阻害・抑制作用を示し、非常に広範な抗菌スペクトルを示すことが報告されている。
● 抗酸化作用
Le Tutourらはオリーブ葉抽出物、oleuropein、hydroxytyrosolの抗酸化活性を測定したところ、合成抗酸化剤であるブチルヒドロキシトルエン(BHT)、天然抗酸化物質であるビタミンEよりも高い抗酸化活性を示した4)。
また、VisioliらはoleuropeinがLDLの酸化反応を抑制、抹消血管や心臓に関係する冠動脈の病気予防に効果があると報告している5)。
● 血糖降下作用
オリーブ葉は糖尿病の民間療法に用いられてきており、Gonzalezらはオリーブ葉の血糖降下作用について報告した6)。また、住吉らはオリーブ葉抽出物の糖付加マウスを用いた実験系において血糖降下作用、抗高血糖作用を有することを確認した7)。
図2 オリーブ葉抽出物10日間投与後の空腹時血糖値
検体無投与群(control)の血中グルコース濃度と比較して、オリーブ葉抽出物(A, B)投与群0.5g/kg・1.0g/kg、αグルコシダーゼ阻害剤0.2mg/kgの投与群は有意に血中グルコース濃度を低下させた。
● 血管拡張、抗不整脈作用8)9)
Petkovらはoleuropeinに降圧効果があることを、ラットを用いた実験で確認し、さらに心臓血管拡張作用や不整脈に対する効果を検討した。オリーブ葉より抽出したoleuropeinは顕著な血管拡張効果があることが確認された。oleuropeinはウサギ心臓の血流を増加させた。塩化バリウムによるウサギ不整脈、塩化カルシウムでラットに起こした不整脈に対してoleuropeinには効果があり、高血圧を引き起こした不眠の犬において血圧を顕著かつ持続的に下げた。
● 抗血栓作用
Abdallah M. Dubらはオリーブ葉のエタノール抽出物について、深部静脈血栓症モデルウサギを用いた実験系において抗血栓効果を検討した。オリーブ葉の抽出物は、血栓重量そのものには変化を及ぼさないものの、血栓の形状をフィラメント化し、内皮からの一酸化窒素放出を促進することで血栓の血管壁への付着を阻害、結果として抗血栓作用を示すことを確認した。10)
○ 血圧降下作用11)
Cherifらは高血圧患者に対しオリーブ葉抽出物を用いた試験を行った。患者を12人(初診)、18人(降圧薬を使用したことがある)の2グループにわけ、15日間偽薬を与えた後、オリーブ葉抽出物(400 mg)を1日4回、3ヶ月間服用させたところ、全ての患者で血圧が有意に降下した(p<0.001)。血中の生物学的パラメーターを測定したところグルコース、カルシウムの僅かな減少以外の変化は認められず、副作用は2つのグループで認められなかった。
COMMISSION E:unapproved herbとして記載されている。
副作用は報告されていない。
70%oleuropein含有製剤において、LD50は腹腔内投与で1300 mg/kg、経口投与で3000mg/kg であることが確認されている12)。
1)H.P. Fleming et al.,Appl. Microbiol., 26, 777 (1973)
2)G. Bisignano et al.,J. Pharm. Pharmacol., 51, 971 (1999)
3)H.E. Renis .,Antimicrobial Agents Chemother., 9, 167 (1969)
4)B. Le Tutour, and D. Guedon.,Phytochemistry, 31, 1173(1992)
5)F. Visioli, and C. Galli.,Life Sci , 55, 1965(1994)
6)M. Gonzales.et al.,Planta Med., 58, 513(1992)
7)住吉 真帆ら,医学と薬学, 50(3) , 341(2003)
8)V. Petkov, and P. Manolv.,Arzneim. Forsch,22, 1476 (1972)
9)V. Petkov, and P. Manolv.,Medicine East and West ,6, 123 (1978)
10)Abdallah M. Dub and Aisha M. Dugani .,Libyan J Med.,8, 20947(2013)
11)S. Cherif. et al.,J. Pharm. Belg.,51,69 (1996)
12)Koch H. et al.,Wissenschaftliches Erkenntnismaterial KooperationPhytopharmaka Bonn., (1987)